点滴の抗がん剤を入れるためには

父親の場合、ポート埋め込み術をしなければならなかった。

手術自体、そんなに長い時間はかからなかったが

初回点滴注入のためも含めて再び入院を余儀なくされた

『去年の12月に大手術をしたというのにまた手術。。』
父はまた落ち込んだ。

これを入れてもらえばスムーズに体に入っていくし、もう少しの辛抱だよ!頑張ろう!
いつも通り身内で励まし続けた。

ドクターから説明を受けた翌日
ポート埋め込み術施行。
違和感はあるものの体調は良好とのこと。
約2週間ほどの入院生活だった。
しかし、この抗がん剤点滴を打った3日ほどしたころ
副作用からか全身倦怠感、足の冷感、下痢が出現。
そんな中でも救いだったのが
吐き気や食欲不振には一切ならなかったことだった。
『いつもお腹が空く。いつも食べていたい気分。』

心配な反面、微笑ましくもあった。

抗がん剤の副作用は、出現するタイミングも、度合いも個人差があり

父に関して言えば

倦怠感や下痢以外は

痛みや食欲不振などとは無縁だった。

ただ、食べても食べても体重だけは

少しずつ減ってきていた。

そこが父の毎日の悩みだった。

分食すると言っても、癌の特性上、カロリーや脂質制限のあるものしか体内に取り入れられないため

本人の好き嫌いも多い方だが
病気に合わせたサクッと食べられる食事、軽食というものを毎日違った形で摂取するということは

なかなか簡単ではなかった。

手術をした病院の管理栄養士と、抗がん剤を受けている地元の病院の管理栄養士二人から

ありとあらゆる情報を教えてもらったり
カロリー制限の患者用のカタログを提供してもらったりもした。


もらった業務用カタログの中から、管理栄養士が選んだ商品のサンプルをもらえるハガキまで頂いた。

しかし実は、サンプルハガキをもらう前に
病気の体には、ニンジンやりんごなどが体にいいことを私自身感じていたため
カタログを見たその日から【ブイクレス】という商品に目をつけており

その商品の、ドリンクタイプのキャロット味を30本、ラ・フランス味、マンゴー味などを各10本ずつ、早めに注文してすでに自宅に到着していた。

しかし管理栄養士から頂いたサンプル商品というのが
なんと私が目を付けていた【ブイクレス】!

早めに届いていた商品をすぐに父に渡し、"これ絶対いいと思うから続けてね!"っと今までにないぐらい以前からゴリ押ししていた私、、。

『サンプルの分ももらっておこう!』

もらえるものはもらっておけ精神な田舎親父。笑
普段は気が乗らないところだけど
こればかりは首を縦に振るしかなかった。

父の言う通りに、翌日の朝 早速ハガキを投函した。

サンプルの分も届き、免疫療法の準備も整い
、抗がん剤点滴も順調に進み

ダブルならぬトリプル攻撃で癌を蹴飛ばしていく!! 

ただひとつだけ人の力だけではどうにもできないことがある。
それは

姉(叔母)の死に対する悲しみと向き合うこと
自分に訪れるかもしれない死と向き合うこと。

メンタルが病んでくると
命をも蝕む

落ちるところまで落ちると
次第に
怒りに変わってくるもの

それが人間の普通の感情であり
沸き起こる感情に対しての周りの理解も必要。

毎日自分と向き合う度
母とのコミュニケーションも
こちらが目を背けたくなるほど
ひどいものだった

『おまえは俺に今までいろんなことを散々吐き捨ててきてるんだぞ!!分かってるのか!?』
『俺は病気なんだぞ!』
『自分のことで精一杯なんだよ!おまえのことなんか知るか!!』

父に余裕がないことくらい身内の誰もが理解出来ているつもりでいるしこれからも理解していきたいと思っている

がしかし

父親と愛し愛される夫婦でいたい一心で

どんな時代も駆け抜け
献身的に支えてきた母の40年を考えると

母の想いもまた、痛いほどに突き刺さる

治療は医療機関の職員と家族との連携ですべて順調にいくはずなのに

なぜか

身内がひとり、ひとり
余裕がなくなっていった。

病気は
患った本人はもちろんだが

それを支える人もまた 病んでいる。

病院へお見舞いに行く時もそう。

昨日の夜は眠れたかな?
今日の気分はどうかな?
ご飯や水分は摂れているかな?
笑えているかな?
泣いたりしていないかな?
怒ったりしていないかな?
吐いたり、下痢したりしていないかな?
どこか痛みはないかな?
考え込んだりしていないかな?
ふさぎ込んではいないかな?

実にいろんなことを想像しながら

回復に向かうことを願い、病院へ向かう。


医療の進歩は嬉しいし
病気をなくせる世の中になっていくのはとても喜ばしいことだが


1番大事で重要なのは

もっと奥深く

そして案外単純なことであるように思えてならない。