日本の伝統的な組織の多くはプロジェクトを完了させない傾向があります。組織外へ仕事を依頼(外注)したものの検収を期限までに上げなかったりするような悪しき商慣行がありましたが下請法の関係でかなり減りました。しかし、組織内で仕事を依頼(内製)した場合には根強く残っています。あらかじめ組織に割り当てられているミッションで主要なものはお互いそつなくこなすのですが、新しいことや境界があいまいな仕事に関してはうまくいかなかった時に責任を回避したいので割り当て決めの時から揉めて、プロジェクト終盤になっても主割り当ての業務で手一杯で他の組織がやるべきことと主張しあって終わりがありません。
揉めるくらいならスパッとやり切ったほうが担当している要員が空き、プロジェクトリーダーは別のことに挑戦できるようになるのですがそれをすると更にやりたくない別の面倒な仕事が割り当てられてしまいます。下手をすると主要な業務の方の評価が下がることすらあります。理屈としては、仕事を引き受けられる→業務負荷が低い→簡単な仕事と見える ということです。それだから余計に余裕がないと主張して、いつまでも終わらせません。
担当要員が完了したと報告しても難癖をつけて完了させない、あるいは嘘の進捗報告をする小賢いプロジェクトリーダーが増えます。大体のプロジェクトは計画よりも少し遅れるようになります。予算や納期が少し超過するのです。これはさまざまな組織でありがちな事象です。進み遅れ無し、予算通りのプロジェクトマネージャーを最高評価にしていないからです。予算通りに執行することを評価すれば過大に積むことが無くなります。そしてプロジェクト休暇制度をきちんと運用して、プロジェクトが成功したらきちんと追加報酬と休暇を与えるべきです。そうすれば、燃え尽き症候群になることを防ぐことができます。プロジェクト完遂でメンバー全員のモチベーションが高まり、次のプロジェクトへの力が湧きます。

プロジェクトに関してきちんと制度もあって計画通りに終えたほうがよいと分かっているのにできないことには根深い理由があります。
・遅延しているプロジェクトを高難易度で大変なプロジェクトと経営者(評価者)が誤認する
見積もりが甘いだけ予算超過、遅延プロジェクトだらけになる。できるプロジェクトマネージャーは嫌になって離脱する。言い訳上手なプロジェクトマネージャーが残留する。
・スケジュールや予算を提示すると必ずカットされる
予算管理者はプロジェクトの起案者に対して過大な予算、余裕(バッファー)が積まれているのではないかと疑心暗鬼になっている。あるいは予算を削減させた方が自分の成果になると考えている。そういう場合な備えて起案者は実施が確実なプロジェクトは大目に積んでおく。実施されない可能性が高いものはプロジェクト後半になってから増額交渉する。プロジェクトが始まってしまえば中止する決断はできず、投入した予算を無駄にはできないと考えるので大体の場合には通ってしまう。
・プロジェクトが終わったらもっと大変なプロジェクトにアサインされる
プロジェクトリーダーやメンバーで、できる人を手待ちにさせておくのは損失なので別の仕事を割り当てます。必然的に上手くできると片付いてしまうので、よりうまくいかない仕事に当たるのです。
ところで本当に優れたプロジェクトマネージャーが見つからないと聞きませんか? なぜでしょうか? 利害調整などをうまくできる人、しかしできすぎると要らない人だと思われてしまうのです。対外的には暇そうで何もやっていないように見える人になるのです。だから見つけることは難しいのです。
きちんと評価できない組織に遠因があると思いますが、最終的に経営者の問題ということになるので組織内では指摘できませんのでモチベーションが低いまま力なく惰性で仕事を続けるるしかないのです。
そうならないためにも経営者はプロジェクトはきちんと区切って、完了させる、正しく評価することが大切です。仕事の好き嫌いを許さない文化があると思いますが、労使ともにそんな考え方です。嫌になっている要員は別のプロジェクトにアサインしたほうが人材を失うリスクを減らせます。
以上、仕事術 完遂すると力が湧く でした。