先週Facebookに知り合いのゲイカップルが連名で離婚報告してました。個人的に会ったりする間柄ではないけれど、共通の友人のホームパーティーなどで何度か顔を合わせたことのある二人です。仲良さそうだったのに外野からは何があったのかはわからないもんですが、このカップルには代理母出産で授かった息子がいます。確か、そろそろ10歳になるかならないか。これからこの子はどうなっちゃうんだろう、うちの旦那と話してます。医者同士のパワーカップルなので、金銭的には困らないんだろうけど、なんだかやるせない気分です。男女のカップルの離婚でも子供へのダメージは大きいはずなのに、、、。二人のゲイ父に育てられてきた子の心境はいかばかりなものかと老婆心ながら思ってしまいます。

 

アメリカでは、ハッピーな出来事だけでなく離婚など非常にプライベートな出来事もFacebookなどソーシャルメディアでアナウンスする人が結構います。すごく皮肉を込めて言わせて貰えば、ポエム調な文章で悲劇のヒロイン的を演じ同情を買う「かまってちゃん」に見えなくもない。こういう個人的なことを世界中に向けてわざわざ発信しなくてもね〜というアメリカ人も多くて、うちの旦那などは「こういうのって自分に酔ってる奴らがやるんだよ。それに離婚報告って、結局、私は今日からシングル。お相手募集中」の宣言だと、言い切ったりしてます。アメリカの特に白人中年離婚者の再婚マーケットの回転は早い早い。離婚後1週間で恋人ができたりする人もいます。もちろんそういう人たちはその前に着々と仕込んでるんでしょうけど。おかまの世界では、格好の噂話を提供しちゃってる感じ。と、私もちょっと斜に構えすぎでしたらすみません。

 

この人たちも離婚した。子供たちは元々リッキーの子たち。

 

さて、この知人カップルは、盛大な結婚式、息子さんの誕生、成長を逐一Facebookに掲載していました。鼻につくのでトップストーリーに出てこないように設定してました。日本でも赤ん坊の写真入りの年賀状を送って来た家族が、子供が成人するまで毎年欠かさず家族写真を入れた年賀状を送ってくるみたいな。このカップル、ついこの間はディズニーに行って子供の誕生日を祝ってた投稿をしていたばかりと思ったのですが。この離婚報告では、「息子はどうなるの?」と言った心配の声とともに、子供はお前らのアクセサリーじゃないんだよ、と結構な誹謗中傷も見かけました。野次馬根性でずっとコメント欄追ってたのですがちょっとした炎上状態。特に何度もベビーシッターさせられてたというこの夫夫のお友達は何も聞かされたいなかったらしく、FBのコメント上で結構な辛辣なやりとりが交わされていました。

 

リッキー・マーティンが離婚した時も、子供が可哀想と非難の声が上がっていましたが、あの子らは元々結婚前からリッキーの子供だったので、知り合いカップルのように結婚してから二人で子供を持つ決心をした場合もっと複雑だし、よって批判も大きいのだと思います。こちらの法律では精子を提供した方の男が実の父親として認められるわけではなく、男女のカップルと同じように親権が争われるのです。Facebookで連名で報告したということは、もうそういった話がついてるんでしょうけど。

 

旦那とこの話をしていて、昨年のトライベッカ映画祭で公開された映画「Our Son」を思い出しました。トライベッカ映画祭は9.11テロからの復興を祈念して創設された比較的新しい映画祭で、新進気鋭の作家の前衛的な作品や、現代的な問題をテーマにした作品などが公開されます。「Our Son」はまさに子持ちのゲイカップルの離婚というとても新しいテーマを取り上げた作品。映画祭の時は見逃してしまったので、これを機に見てみました。AppleTVなどでストリーミングしてます。主演はゲイを公表しているイギリス人俳優Luke Evans。

 

 

 

 

Luke演じるNickyとその夫Gabrielには8歳になる息子Owenがいます。しかし、仕事で忙しいNickyと、息子の世話に専念する専業主夫Gabirelの間の隙間は修復し難いものになり、Gabrielの浮気をきっかけに二人は離婚を決意します。息子のOwenは、Nickyの提供した精子で友人女性Adeleとの間に人工授精でできた子。親権は当然Nickyとなるのかと思いきや、こういう場合でも、男女のカップルの間に生まれた子と同じように扱われることがわかり二人の間で醜い親権争いが始まる、というストーリーです。

 

メリル・ストリープ主演でマンハッタンに住む若い夫婦の離婚を描いた名作「Kramer vs Kramer」(1979)を彷彿とさせる内容です。「Kramer vs Kramer」はストレートカップルの離婚劇ですが、離婚に至るさまざまな要因は同性婚でも同じで、男女カップルで起こり得るような子育ての構図がNickyとGabrielの間でも展開されています。マンハッタンの出版業界の第一線で活躍するNickyは3人が何不自由ない生活を送れるように仕事で多忙。一方、GabrielはOwenを面倒見るため仕事を辞めて専業主夫をして10年。Owenはどちらかというと母親的な役割をしているGabrielに懐いている。しかし、離婚となるとNickyの財政的後ろ盾がないと子供の養育はできない、、、。

 

本当に色々考えさせられる内容の映画でした。特に、実生活で知っているゲイカップルが離婚して、その息子さんの行く末はどうなるんだろうと心配していた矢先。子供を持とうとするゲイカップルを非難するわけではないけれど、映画の中のカップルも、現実の知人カップルも、本来自然には生まれえないはずなのに自分たちの意思で子を持つ決断をして、周りを巻き込んで、結婚がうまくいかなくなったから別れます、と。子供が一番可愛そうだと思ってしまいます。映画は、落ち着くところに落ち着いた感があるエンディングでしたが、現実の世界では延々と生活が続いていくわけで、こういう子供の人生にどのような影響を及ぼすのだろうと、心配でなりません。

 

 

映画批評やレビューサイトを見ると、賛否両論。辛口評価が多いように見受けられますが、それは、私と旦那が友人カップルに対して思う複雑な感情と同じで、「おかまが結婚して子供持って、それで離婚かよ」という風に登場人物の背景に共感できない人が多いことが要因の一つと思います。ただ、それは逆にいうと、それだけ生々しくゲイカップルを描写していたということかもしれません。映画自体はよくできていたと思います。

 

主演のLuke Evansもとてもいい味出してたと思います。若い頃から第一線で活躍して今年45歳、コンスタントに作品に出ています。年相応の役柄に脱皮できないイケメン俳優が多い中、彼の場合白髪も顔の皺も隠そうともせずヒーロー的ではない役を演じる姿を見て、やはりいい役者さんだなと思いました。これまであまりマークしていなかったLuke Evansについて、もう少し知りたいと思うようになったので、日を改めて彼をフィーチャーしたいと思います。