2000年に製作されたウォン・カーウァイ(王家衛)監督の映画「花様年華」が20周年を記念し4K版となってニューヨークに登場。「欲望の翼」や「恋する惑星」等他の名作と共にWorld of Wong Kar Waiと称してリンカーンセンターでの春先に上映されたのを皮切りに、ニューヨークのいくつかのミニシアターでも上映されていました。
「花様年華」は大好きな映画で、上映当時からこれまでにも数度観ていたのですが、今年ニューヨークで3回も鑑賞してしまいました。1960年代の香港を舞台に、共に配偶者を持つ男女の、狂おしくも静かな関係を官能的な映像美で描いた大人のラブストーリーです。映画評論家でもない私が陳腐な言葉で評することは避けますが、毎回観るごとに惹き込まれるシーンが違ったり、主演二人の表情の機微を見比べたりと、その都度新しい発見があり、まるで尊敬する旧友に会いにいくかのような気分で毎回映画館に向かいました。
(主演のマギー・チャンが全てのシーンで素晴らしい。)
3月にリンカーンセンターで観た時は、映画館の入場キャパシティ制限の都合で、間隔をあけた指定席でゆっくり観る事ができました。その後、IFCセンターでも数ヶ月にわたって上映されており、IFCでは2回鑑賞しました。割と大きめのスクリーンで心ゆくまで映像美を堪能。ウォン・カーウァイ監督の映画は、時系列が交錯していて、解釈も鑑賞者に委ねられるようなところが多いのですが、3回観て初めて複雑かつ微妙すぎて解釈しきれなかった場面を自分なりに理解、ストーリーの全容を理解するに至りました。また20年前の若かりしころの時とは全く違った余韻に浸ることもできました。
コロナ禍が始まり、オンラインストリーミングサービスも並行して提供されていましたが、家だと気が散りますし、映像が綺麗な映画はスクリーンで観るのが一番。そして、会話こそしませんが、こういう知る人ぞ知る空間に足を運んでいる他のお客さんと、なんとなく同志になって感動を分かち合ったように感じる事ができるのがニューヨークのミニシアターの醍醐味だと、改めて感じました。観客層はアジア系中心で年齢層も高いだろうと思っていたのですが、さまざまな人種の若いニューヨーカーが多くて驚きでした。
(IFCセンター 地下鉄W4 Street駅真上です。)
IFCセンターは、こうした世界各国の名作から新進気鋭の作家の作品、ドキュメンタリー、LGBTQ映画、短編映画など大手配給会社が取り扱わないような作品を上映しています。日本映画の特集も頻繁に組まれており、ここ数年では、黒澤明、小津安二郎監督作品や、三船敏郎主演作をシリーズで上映しており、コロナ前は最低月1回は行ってました。日本のアニメも新旧作品ともに頻繁に上映しており、ジブリ特集も定期的に開催しています。
興味がある方はぜひご覧になってください。