カーラの目覚め | SFショートショート集

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SFショート作品それぞれのエピソードに関連性はありません。未来社会に対するブラックユーモア、警告と解釈していただいたりと、読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。長編小説にも挑戦しています。その他のテーマもよろしく!!

本編は「ミーチャ」・・・続編です。

 

 直ちにリリーは自宅にあったレスキュー・ボディを抱えて、ソフィアのオフィスにテレポートで戻ってきた。スカイ・フォーもファンタスティックスリーも、テレポート能力は元来タイプワンであったが、テレポート能力がタイプツーにアップグレードできたのは、ヒューマンセンス取得のおかげである。

 ジョージが、カーラの隣に並べられたベッドにレスキュー・ボディを横たえるのを手伝いながら、シャリーに尋ねた。

「このボディにミーチャが入ってくれるのかな?」

シャリーが

「おそらく、間違いなくね・・・我々としては、待つしかありません。これからカーラに用意できたことをテレパスしましょう」


 

 一方カーラは 、ルフィナに生身の体ではないが、サイボーグ・ボディを提供できることを伝えた。ルフィナはこれまでに一度もサイボーグ・ボディに乗り移った経験がなかったので驚いていた。しかし、カーラは事前にシャリーからのテレパシーで、それが不可能ではないことを知り、それをルフィナに伝えた。理論的にはデジタル・マインドと同じ状態がミーチャの意識なのだ。違いは人工由来なのか自然由来なのかということである。

 ルフィナはカーラに

「今までこんな考えは思い浮かばなかったよ。というか・・・生身の身体がないと、お前は生きられないといつもマリコフに言われて、それを信じていた・・・」

その時、シャリーからボディの用意ができたとテレパスが返ってきた。

「あなたはマリコフに操られていたのよ。私たちの用意したボディに乗り移ったら、サラやニナと直接話ができるわ」

「そうだね・・・じゃぁ行くよ!」


 

 ベッドに横たわったリリーのレスキュー・ボディが、僅かに動いた。サイボーグ・ボディを囲んでいたルスラン博士、クリスチーヌたちはゴーグルを覗き込んでいた。そして、半透明のゴーグルの奥の目が見開いたことを確認した。もう一方のカーラを囲んでいたウィン博士、リリーたちは、カーラが目覚めることを今か今かと待ち望んでいた。



 

 そして・・・ついにカーラが目を覚ます時が来た。


 

 カーラの目覚めを確認すると、起き上がったカーラにリリーが抱きついてきた。

「良かった・・・無事で良かったよ!カーラ」

その場にいた全員が声を合わせた。

「お帰りなさい、カーラ!!」

「ありがとう、みんな・・・私は大丈夫よ」

すぐさまカーラは隣のベッドの様子を伺った。フラッシュリングで拘束されているボディを見て、

「リングを外しても大丈夫、ルフィナはもう私たちの仲間よ」

フラッシュリングが消えると、サラとニナがすぐにルフィナに寄り添った。

「新しいボディの着心地はどうだい?」

上半身を起こしたルフィナは、ニナが聞いてきた質問に対して

「・・・何だか落ち着かない。初めてのサイボーグ・ボディだからね」

続けて、

「ありがとう・・・あたしは地球人を誤解してたようだね。それにしても、マリコフはなんて奴だ!」

 

 ウィン博士が、

「カーラも無事に戻ってきたことだし、一息入れようじゃないか」

 奥から給仕ロボが熱々のコーヒーを持ってすべるように現れた。丸テーブルに置かれたコーヒーカップをそれぞれが口にしていたが、ルフィナのレスキューボディでは飲食はできなかった。

ルスラン博士が、

「すまんな、君のために違和感のないボディを造ってあげよう。それまで我慢してくれないか、それは緊急用のボディだと思ってくれ」


 

ラウロが思い出したように、

「結局、リリーの予知夢の意味って何だったのかな?」

ミニョンが

「きっと、カーラに乗り移ったルフィナが改心したことで本物のカーラが蘇って、カーラに化けていたミーチャを弔った・・・ということになるんじゃないかしら?」


 

 ウィン博士から

「ルフィナに聞きたいことがあるんだが・・・」

「何だい?」

「ミーチャ・・・つまり、人に憑依する場合、どのようにして相手を選ぶのかね?」

続けて

「ボブの話だと、マーシャン・リームとの協議中に最初の異変が起きたと聞いているが、君はいつからカーラに憑依していたのか、それを知りたかったのだよ」

 傍らで聞いていたクリスチーヌが

「私もそれがさっきから気になってた!」


 

…続く