直ちにリリーは自宅にあったレスキュー・ボディを抱えて、ソフィアのオフィスにテレポートで戻ってきた。スカイ・フォーもファンタスティックスリーも、テレポート能力は元来タイプワンであったが、テレポート能力がタイプツーにアップグレードできたのは、ヒューマンセンス取得のおかげである。
ジョージが、カーラの隣に並べられたベッドにレスキュー・ボディを横たえるのを手伝いながら、シャリーに尋ねた。
「このボディにミーチャが入ってくれるのかな?」
シャリーが
「おそらく、間違いなくね・・・我々としては、待つしかありません。これからカーラに用意できたことをテレパスしましょう」
一方カーラは 、ルフィナに生身の体ではないが、サイボーグ・ボディを提供できることを伝えた。ルフィナはこれまでに一度もサイボーグ・ボディに乗り移った経験がなかったので驚いていた。しかし、カーラは事前にシャリーからのテレパシーで、それが不可能ではないことを知り、それをルフィナに伝えた。理論的にはデジタル・マインドと同じ状態がミーチャの意識なのだ。違いは人工由来なのか自然由来なのかということである。
ルフィナはカーラに
「今までこんな考えは思い浮かばなかったよ。というか・・・生身の身体がないと、お前は生きられないといつもマリコフに言われて、それを信じていた・・・」
その時、シャリーからボディの用意ができたとテレパスが返ってきた。
「あなたはマリコフに操られていたのよ。私たちの用意したボディに乗り移ったら、サラやニナと直接話ができるわ」
「そうだね・・・じゃぁ行くよ!」
ベッドに横たわったリリーのレスキュー・ボディが、僅かに動いた。サイボーグ・ボディを囲んでいたルスラン博士、クリスチーヌたちはゴーグルを覗き込んでいた。そして、半透明のゴーグルの奥の目が見開いたことを確認した。もう一方のカーラを囲んでいたウィン博士、リリーたちは、カーラが目覚めることを今か今かと待ち望んでいた。
そして・・・ついにカーラが目を覚ます時が来た。
カーラの目覚めを確認すると、起き上がったカーラにリリーが抱きついてきた。
「良かった・・・無事で良かったよ!カーラ」
その場にいた全員が声を合わせた。
「お帰りなさい、カーラ!!」
「ありがとう、みんな・・・私は大丈夫よ」
すぐさまカーラは隣のベッドの様子を伺った。フラッシュリングで拘束されているボディを見て、
「リングを外しても大丈夫、ルフィナはもう私たちの仲間よ」
フラッシュリングが消えると、サラとニナがすぐにルフィナに寄り添った。
「新しいボディの着心地はどうだい?」
上半身を起こしたルフィナは、ニナが聞いてきた質問に対して
「・・・何だか落ち着かない。初めてのサイボーグ・ボディだからね」
続けて、
「ありがとう・・・あたしは地球人を誤解してたようだね。それにしても、マリコフはなんて奴だ!」
ウィン博士が、
「カーラも無事に戻ってきたことだし、一息入れようじゃないか」
奥から給仕ロボが熱々のコーヒーを持ってすべるように現れた。丸テーブルに置かれたコーヒーカップをそれぞれが口にしていたが、ルフィナのレスキューボディでは飲食はできなかった。
ルスラン博士が、
「すまんな、君のために違和感のないボディを造ってあげよう。それまで我慢してくれないか、それは緊急用のボディだと思ってくれ」
ラウロが思い出したように、
「結局、リリーの予知夢の意味って何だったのかな?」
ミニョンが
「きっと、カーラに乗り移ったルフィナが改心したことで本物のカーラが蘇って、カーラに化けていたミーチャを弔った・・・ということになるんじゃないかしら?」
ウィン博士から
「ルフィナに聞きたいことがあるんだが・・・」
「何だい?」
「ミーチャ・・・つまり、人に憑依する場合、どのようにして相手を選ぶのかね?」
続けて
「ボブの話だと、マーシャン・リームとの協議中に最初の異変が起きたと聞いているが、君はいつからカーラに憑依していたのか、それを知りたかったのだよ」
傍らで聞いていたクリスチーヌが
「私もそれがさっきから気になってた!」