《非暴力防衛・いわき》第十五号 読書会・戦争をなくすために・会報         | 非暴力防衛〈実行のための研究〉ネット

《非暴力防衛・いわき》第十五号 読書会・戦争をなくすために・会報        

 

《非暴力防衛・いわき》第十五号

      読書会・戦争をなくすために・会報

           2022年11月

「市民力による防衛」(ジーン・シャープ)    

第二章  権力の源泉を利用する(抜粋)

 第一章は いわば序論であり 歴史的実例を紹介しながら「市民力による防衛」のイメージが説明されました。

 第二章は、(私の理解では)いわば《原理論》であり、「何故、《市民力による防衛》などという途方もないことが可能になるのか」を説明し、第三章・第四章での、{市民力による防衛}の方法のやや詳細な説明へ繋ぐものになっています。

 この章の結論は、ある意味では簡単で、権力を保持している側・支配者の権力は、そもそもは「被統治者・市民の承認~支持によって成り立っている」のだから、これがなくなったら権力は崩壊するというものです。

 彼は、これを次の10の節を追って説明しています。

・  予想外の力量

・  他人頼みの支配者たち

・  権力の源泉を特定する

・  被統治者への依存性

・  抑圧では不十分

・  集団的抵抗の可能性

・  実行の必要条件

・  人びとによる抑制の構造的基盤

・  自由の構造的基盤

・  防衛の社会的起源

 

・  予想外の力量

「ほとんどの人にとって、軍隊も戦車も航空機も爆弾もミサイルもないのに、侵略軍を無力化し、侵略者を撃退できるという考えは、異常な考えだと思えるだろう。

「侵略を抑止・撃退するために、軍事兵器などはもはや不必要になるほどに非常に効果的に利用し、巧みに用いることが出来る潜在的力量が社会に内在する」

「第一章で触れた四つの事例で、人々は、心理的・社会的・経済的・政治的武器という全く別の武器で武装していたのだ。

「支配者は彼らが支配する人々と社会に依存している。

「人々と組織とによる侵略者への協力の停止は、すべての支配者が依存している〈権力の源泉〉の入手可能性を縮小させ、かつ切断してしまう。

これが入手不可能になれば、支配者の権力は弱体化し、ついには崩壊してしまう。

 

・       他人頼みの支配者たち

「支配者によって行使される権力は、支配者に本来的に備わっているものではないないということは、明白で単純で、しかししばしば無視されてきた、理論的にも実践的にも大変重要な洞察である。

支配者は権力を所有しているのではない。また支配者はじぶんひとりで権力を行使するのではない。

支配者にとってそのような権力が入手可能とされる限りにおいてのみ、支配者はその権力を行使することができるのである。

「全面的な協力・恭順・支持は、支配者の権力の力量を高めることになるだろう。

逆に協力の制限あるいは停止は、必要とされる〈権力の源泉〉の入手可能性を減少あるいは切断するだろう。

「支配者は、従わない者・協力しようとしない者を、脅迫し、処罰するであろう。

「いくら抑圧を加えても、権力の源泉が、かなりの期間、制限・留保・切断されたままだと、支配体制内で生じることは、不安と混乱で、続いて、権力の弱体化、ついには体制は麻痺し、厳しい場合には体制の崩壊にさえ至るであろう。

「ラ・ボエシ『もし専制君主に全く従うことをしなければ、戦わずとも、敗北したも同然である。』

 

・       権力の源泉を特定する

「政治権力は、下記の〈源泉〉の、相互作用から生じる。

「権威。「天然資源。「技術と知識。「無形の要素(心理的・イデオロギー的要素、感情、および信念)。「物的資源。「制裁。

 

・       被統治者への依存性

「支配者の〈権力の源泉〉の停止の影響

「権威:統治権を拒否・・・全体的合意、集団的合意の停止は、協力・恭順・指示を制限、拒否する。

「技術と知識:政治的協力を拒否し従わないといった能力は、われわれの都合に合わせていつでも発揮でき、〈大義〉のための集団的行動に用いられた場合、強力なものとなる。

 

・       抑圧では不十分

「非協力による同意の停止・・・体制側は、〈取締り〉の強化に頼らざるを得なくなるだろう。

「制裁はつねに服従と協力を取り戻すのに成功するものではない。

「強制された服従は、義務の遂行に効率の悪さを齎す。

「刑罰に直面したでさえ、服従、あるいは、不服従と危険を選択することが出来る。

「制裁を加えるには、警察隊・軍隊等、および一般住民の何らかの支援が必要となるが、状況によっては、そうならない場合もあるだろう。

「権威の否定・抵抗者の大義への共感・非暴力闘争者への暴力行使の嫌悪感は、意識に影響して、支配者の権力を、弱体化させる。

 

・       集団的抵抗の可能性

「支配者の権力が援助と恭順の停止によって制御され、〈臣民たち〉が恐怖心を大幅に減少させたり、払拭してしまい、変革の代償として進んで制裁を受けようとする意志をもつなら、大規模な不服従と非協力は可能となる。

「もし人びとが、軍事的に成功している侵略者たちを自分たちの政治的主人だと認めることを拒否したら、首都を占領し、選出された指導者たちを逮捕或いは殺害し、新しい政府となったと宣言した時、もし人びとが拒否したら一体どうなるのだろうか。

一般の人々が、政治権力の本質に根差す、みずからの潜在的な力を理解している場合、この問題が現実的・実践的な選択肢として浮上してくるのである。」

 

・       実行の必要条件

「次の問題は、そのための・・・・必要条件である。

第一に、協力の拒否の多くは危険であることを承知して、努力・勇気・英知が必要である。

 第二に、集団的あるいは大衆的行動でなければならないことである。即ち社会集団と組織とによって、支持・協力・恭順が、同時に留保されるときにこそ、重大な脅威を与えることが出来るのである。

 例えば、全国民に向けての、非合法的な、全教会による体制弾劾。数千人の労働者の一致団結した労働組合のもとでの見事に組織化されたストライキ。ほとんどの官僚の一斉の協力拒否。

 

・       人びとによる抑制の構造的基盤

「支配者を抑制するために行動する能力は、社会の非国家的な集団と組織の在り方に影響される。

例えば、家族・階級・宗教団体・職業集団・経済団体・村と町・都市・地方と地域・任意団体・政党など・・」

「これらが支配者を抑制する「構造的基盤」となる。 

具体的には、これら権力核の大きさと活力。これら〈集団・組織〉間の関係。支配者との関係による。

 

・       自由の構造的基盤

「社会というものは現実的には、正式な憲法あるいは法の規定が示すよりも、もっと自由であるかも知れないし、もっと抑圧的であるかもしれない。

「社会の力が、人類の自由の最強の保証者である。

 

・       防衛の社会的起源

「人々と組織は、攻撃者と必要とする同意・服従・協力の承認を拒否することによって、社会を防衛することが出来る。

「この洞察は防衛者たちが、攻撃に対して直接的に社会内部の力を用いて攻撃者と闘う、という道を切り拓

く。

「全組織あるいはその中の重要な部門が独自の意思決定をし始め、攻撃者の命令を公然と拒否して独立的な行動をとり始めた時、彼らは国家機能の不安定要因となる。彼らは、攻撃者にとっては、深甚な脅威となる。

「攻撃者の権力のこういった弱体化と崩壊は、破滅的な軍事兵器を用いることなく可能である。社会が内部的に強力であり、その自己決定権を行使し、そしてしっかりと準備を整えて攻撃者を拒否する時、この社会力に依拠する防衛こそが、侵略者にに対する最も効果的な対抗措置に他ならない

「もし防衛者たちが抵抗を望むのであれば、また重要な政治権力の源泉を管理下に置くことのできる強力な独立した組織を持っているのであれば、そして巧みな非協力と公然たる拒否の運動を展開できるのであれば、その時こそ、社会の力による防衛が、攻撃を迎え撃つ一つの現実的な選択肢となる。

 しかしながら大衆的な強情さと集団的な頑固さだけでは不十分であって、闘争を始める前に人々は、一体どのように闘争を行っていくのか知っておかなければならない。

 人々は、非暴力行動の技法を理解しておく必要がある。

             

・・・所感・・・

 ジーン・シャープは、ここまでで、「何故、《市民力による防衛》などという途方もないことが可能になるのか」といういわば《原理論》を終え、次の第三章 権力を行使する で、第二章の最後で説いた「非暴力行動の技法」の説明に移ります。

 ただその前に、現在、ウクライナで起こっていることと この章・・・特に最後の節「防衛の社会的起源」で説かれていることとを思い合わさざるを得ません。

「もしウクライナ政府と市民が、重要な政治権力の源泉を管理下に置くことのできる強力な独立した組織を持っていて、巧みな非協力と公然たる拒否の運動を展開していたら?」

 ウクライナ侵攻の怖れについて報道されるようになった今年の2月facebookのウクライナ大使館のページに「非暴力防衛を期待する」と投稿したのです。

 『ウクライナの人々が ロシアの侵攻に備えて 軍事訓練を始めていると伝えられています。その気持ちはわかりますが ゲリラ戦は悲惨であり成果は・・・私はチェコのビロード革命を参考に全市民の非暴力市民的不服従を組織されるよう期待しています。』と。 

ジーン・シャープが説く「闘争を始める前に人々は、一体どのように闘争を行っていくのか知っておく。」

には間に合わなかったかも知れませんが。(鞍田東)

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読書会は 会場が準備出来次第 ご案内したいと考えています 鞍田 ak3501@hotmail.co.jp