「犯人は思考」——人前で話すことが苦手だった私は、緊張するたびに『また失敗だ』『やっぱり私はダメだ』と心の中で自分を責めていました。実際に傷つけていたのは周りの人ではなく、私自身の思考だったのです。この“思考の仕業”という視点は、実は恋愛にもそのまま当てはまります。恋愛の不安も同じ。会えない時間に広がる妄想劇のほとんどは、現実ではなく思考の仕業だったのです。
声が震えてしまう私
10年ほど前まで、10人程度の前で話すだけで緊張し、胸がドキドキして声が震えてしまいました。
伝えたいことはあるのに、「私はこう思います」と自信を持って言えない。
「どう見られるだろう」
「褒めてもらえるかな」
「失敗したら恥ずかしい」
そんな外からの判断ばかり気にしていたから、そこに“私自身”はいませんでした。
結果、空回りして支離滅裂。自己肯定感は下がる一方で、「発言できない私はダメだ」と自分を責めていたのです。
犯人は「思考」だった
ある日ふと気づきました。
——私を苦しめていたのは周囲の視線ではなく、自分の思考そのものだった、と。
発言しなかっただけで「考えがないみたいでカッコ悪い」と自分を責め、
「また恥をかく」と未来を勝手に決めつける。
本当は誰からも責められていないのに、頭の中で一人芝居をしていたのです。
心理学ではこれを「反すう思考(rumination)」と呼ぶのだそうです。
同じ考えをぐるぐる繰り返し、ますます不安を大きくしてしまう心の癖。
私の声を震えさせていた“犯人”は、まさにこの思考でした。
恋愛の不安も同じ仕組み
この気づきは恋愛にもつながりました。
たとえば彼と会えない時間。
「何しているんだろう」
「もしかして気持ちが冷めたのかな」
実際には何も起きていないのに、頭の中で妄想劇が始まります。
既読がつかないLINEを見て、「他の誰かといるのかも」とシナリオを勝手につくり上げてしまう。
けれど心理学の研究では「不安の9割は現実にならない」と言われています。
不安の多くは、現実そのものではなく、思考がつくりだす幻想なのです。
脳が「物語」をつくる理由
なぜ人は、根拠のない不安に支配されるのでしょうか。
脳科学的には、人間は「空白を嫌う」性質を持っているといいます。
情報がないとき、脳は勝手に穴埋めをして“ストーリー”をつくり出すのです。
この補完作用は、危険を回避するために進化の過程で獲得された仕組み。
そして人はポジティブよりもネガティブに偏りやすい。
これは「ネガティビティ・バイアス」と呼ばれ、
生存のために「危険かもしれない」という予測を優先してきた名残です。
だから恋愛の不安も、会えない時間に自然と“悪い方向の物語”に膨らんでしまうのです。
愛着スタイルと恋愛不安
さらに心理学の「アタッチメント理論」では、不安の強さには個人差があるとされます。
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不安型の人は「見捨てられるかも」と考えやすい
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回避型の人は「近づかれすぎるかも」と別の不安を抱きやすい
つまり、不安を感じるのは“心のクセ”であって、愛の深さや人間性の欠陥ではないのです。
思考に支配されないために
不安や緊張を完全になくすことはできません。
けれど「これは思考がつくった物語かもしれない」と気づくだけで、心が軽くなりませんか?
「犯人は思考」だと知った瞬間、現実と妄想を切り分けることができる。
そして恋愛でも人前でも、私たちは“思考の劇場”から抜け出し、ただ目の前の相手と関わることができるようになる。
余韻
あの頃の私は、人前に立つときも恋をしているときも、現実ではなく“思考”と戦っていたんですね。
でも今は、不安のほとんどが現実にならないことを知っています。
だから恋の不安も、ほんの少しやわらいで見えているように感じています。
——さて、あなたの心をざわつかせているその不安。
それは現実でしょうか?
それとも、思考が仕掛けた小さな妄想劇かも?
——そう思うだけで、不安は少し薄れていくのかもしれません。
