彼は、間違いなく私の人生の中で特別な人だった。
彼と過ごした時間は、今でも紛れもなく幸せだったと思う。
私は、できる限りの愛情と誠実さで彼に向き合ってきた。
それは、取り繕う必要のない、まっすぐな証だった。
それでも、終わりはやってくる。
誰かを深く愛したからこそ、別れは途方もない痛みを伴うもの。
その痛みは、どうしようもなく私を泣かせた。
毎日のように泣いて、泣いて、
気がつけば、心の中は悲しみでいっぱいだった。
でも、不思議なことに——
心はずっと、その悲しみに満たされたままではいられない。
涙を流すたびに、ほんの少しずつ、
心の中の悲しみが流れ出ていく感覚があった。
そのときは絶望しか感じられなかったけれど、
涙が流れるたび、心のどこかに「余白」が生まれていた。
それは、後になってようやく気づけたこと。
余白——それは、ぽっかりと空いた、空虚とも思えるスペース。
最初はただの喪失でしかなかったその空間に、
やがて新しい希望や、これからの未来が、少しずつ流れ込んでくる。
人はきっと、すべてを満たして生きていけるわけじゃない。
悲しみや涙が心の中をさらっていったあとに残る余白が、
新しい出会いや、予想もしなかった喜びの居場所になる。
私が流した涙も、苦しかった喪失も、
すべては次の季節を迎えるための、静かな準備だったのかもしれない。
「いつか、また心から笑える日が来る」
そう思えるようになったのは、
この余白が、私の中に静かに広がり始めたから。
焦らなくていい。
今はただ、この余白とともに生きていこう。
——そして、また誰かを愛せる日が来ることを、心の奥でそっと信じている。