医療は限りある資源だという事実を日々垣間見るこの頃です。



先日、カリフォルニア州で1日に3700人の方がコロナウイルス感染が原因で亡くなったそうです。

ロサンゼルスカウンティーでは、10分ごとにコロナウイルス感染によって誰かの命のともしびが消えるそうです。5人に1人が陽性検査結果が出ているそうです。

ロサンゼルスエリアで病院のICUは満床だそうです。病院によっては、会議室や廊下ギフトショップなどでもベッドを置いて病気の患者さんのケアに追われているそうです。クリスマスやユダヤ教のハヌカ、お正月、関係なく、たくさんの医療従事者、関連するスタッフが働いています。どこもひどい人手不足。病院によっては救急車の渋滞ができているそうです。

勤務先も同様で、ひどいひどい、人手不足です。アメリカの医療従事者は高給取りなイメージがあるようですが、実際は最低賃金レベルの人たちや65歳以上の働き手など結構過酷な状況なんです。

近隣の病院のICUが満床なので、どうするか。さまざまな医療スタッフが出来ることをして対応しているようです。

コロナウイルスの重篤な患者さんの場合は、受け入れ先が限られているので、状況が難しいと思います。
勤務先は呼吸器系のリハビリを専門にする病院で、段階的に人工呼吸器から自発呼吸に移行する事を行います。

アメリカの医療システムをざっくばらんに説明してみました。合わせて参照してください。

 

 

 


 

この写真は、大雑把な、入院から転院の流れです。
意識がもうろうとしたり、呼吸困難などで、救急車や自力で救急外来にやってきて、入院することになったとします。状態によって、一般病棟、ICUに入ることもあります。

口から気管支に人工呼吸器の管を入れると、ICUレベルのケアが必要になります。
BiPAP (バイパップ)や Airvo (エアボ)と呼ばれる高濃度酸素吸入器が必要な場合も、頻繁なモニタリングが必要です。

スキューバダイビングの酸素ボンベとは違うのです。

人工呼吸器の管を入れると『スッキリ』という訳にはいきません。

ホメオスタシスといって、私たちの身体は体の恒常性、微々たる酸性とアルカリ性のバランスをとっています。肺と腎臓がそのバランスをうまーく保っているんです。

それが、呼吸不全になった時、一気にバランスを失って、体がショック状態を起こすことがあり、心臓が止まってしまうことがあるのです。

ここからが命のドラマで、どんな不具合や結果が出るか誰にも分からない。それを経て、一命を取り留めた場合、私たち医療スタッフは次のステップのケアプランを考えねばならないのです。

アメリカの医療システムはとってもシビアで、入院規定が満たないと、即転院が必要です。さもないと、巨額の費用が待っている。世界一医療費が高いのですから。

どこの病院も必死で受け入れられるベットとスタッフ、医薬品をかき集めています。でも、限界がある。どうするか。

Google検索によると、ロサンゼルスには80の急性期病院(STAC)があります。
Google検索と私の知見が食い違ってましたが、私の職場のようなLTAC病院は約3-5。

その為、人手不足だろうが、患者さんの受け入れを続けないと、医療を必要とする人をどこにも受け入れられなくなる。有名無名病院なんて関係ありません。

そんな訳で、近隣の病院のベットを確保する為に、出来うる事をして、入院患者さんを受け入れる努力をしないといけない。

これだけを書くと『カッコイイ』とイメージがあるかもしれません。
じゃあ、具体的にどうするか…

  • 亡くなった患者さんのご遺体をとっとと病室から仮安置所に移す。
  • 予後が悪い患者さんの緩和ケアプランを家族と話して、積極的にライフサポートを中止するよう促す。
  • 体にキズをつけて長期的なライフサポートを実施する医療行為(invasive procedures、すなわち、 気管切開/tracheostomy や 胃ろう/PEG)をできるだけすすめて、容態が安定している患者さんをICUから一般病棟に転室、転院してもらう。
  • 緊急事態時は、ICUの外でICUレベルのケアを行う時は、男女混合が可能らしく、相部屋をつくる
  • 看護師と受け持つ患者さんの比率を通常より多くする

などなど。


私は間接的にこの歴史、ニュースのひとコマのネジなんだなって、よく思います。


やるなと言うとやりたくなる。
『今年は大変なことがあったから、クリスマスやお正月などの時ぐらいは、大切な人達と過ごしたい。羽目を外したい。』

皆それぞれの想いと都合と用事で動いています。

その気持ち、よく分かります。

かいつまんで、こんな話を聞きました。

仲良6人組でお出掛けしたら、1人が実は自覚症状が全くないコロナウイルス陽性だった。
皆感染して、そのうち1人は亡くなったそうです。

運良く入院できることになったとしても、家族と会えなかったり、必要最低限か以下のケアしか受けられない場合もあるのです。

今、横で家族の誰かが脳梗塞で倒れたとしても、受け入れ先が見つからないかもしれない。高度の障害が残ってしまうかもしれない。

医療従事者もひとりの人間で、休みたいし、家族や友達と会ったり、遊びたい。

授乳をやめた、赤ちゃんがいる医療スタッフもいるそうです。

しばらく見ないなって思ったスタッフが実はコロナウイルス陽性だった。調子も悪いらしい、といった話を耳にしました。

私たちはどうすべきか。

一応医療従事者の端くれなので、こんな事を書くと怒られるかもしれませんが…、

それは、私たちひとりひとりが出来ることをして、決めれば良いと思っています。感情に任せて行動をとるのではなく。

居住地の厚生省や保健所的な機関が出しているガイドラインや何がオッケーでダメなのかを学ぶ。
集う前に、コロナウイルスの検査を受ける。
人との距離を開ける。
手洗いうがい、鼻と口をマスクでおおう。
などなど。実践出来る事はたくさんあるのです。

暮らし方の見直し、棚卸し。

自分がとった行動で誰かに悪影響を与えるより、必要なことを学んで実践し、自信を持って暮らせたら、気持ちも少しは明るくなりますよね。

不確かで、変わりゆく時代だからこそ、必要なことを学んでいきましょうね。

どうか、読んで下さった方やその方の大切な人達が安全でいらっしゃいますように。