前回に引き続き、ヘム鉄の話題です。

 

今回は、より具体的にヘム鉄サプリメントの質について解説したいと思います。

ヘム鉄サプリメントには、価格が高い物もあれば、価格が安い物もありますよね。

 

同じヘム鉄なら、価格が安い方が良い

 

と思うのは、当然のことです。

 

ですが、同じように見えるヘム鉄サプリメントでも、その質にはピンからキリまであります。その違いがなんなのか、誰も教えてくれないヘム鉄サプリメントの真実について、解き明かしていきましょう。

 

まず、ヘム鉄サプリメントの質を左右する主な要因は、つぎのようなことが挙げられます。

 

ヘム鉄サプリメントの質を決定する要因

 

  • ヘム鉄サプリメントに使用されている原料の違い
  • ヘム鉄サプリメントの鮮度維持など、品質管理の違い
  • カプセルもしくは錠剤など製法の違い
※他にもありますが長くなるので今回はこの三つにフォーカスします。
 
 

サプリメントに使用されている原料の違い

ヘム鉄サプリメントは、安いものから高いものまで様々あります。一見すると同じ物が安く売られているように見えますが、その中身である「ヘム鉄」の質は全く異なります。
 
具体的には、ヘム鉄サプリメントには「不溶性」のヘム鉄パウダーと、「水溶性」のヘム鉄パウダーの2種類があります。
 
不溶性ヘム鉄と水溶性ヘム鉄の違い例。写真はILS株式会社HPから引用
 
この2つは見た目は同じでも、その特性や吸収率は全く異なります。
 
基本的に、「ヘム鉄」そのものは「不溶性」の物質です。不溶性ですが、肉や魚などのミオグロビンとして摂取する場合、ミオグロビンに含まれているタンパク質が胃酸などの消化酵素によって分解されてアミノ酸になり、ヘム鉄とアミノ酸がペプチド結合することで水溶性になります。
 
水溶性になったヘム鉄は、溶解性が高まることから吸収率がアップするという特徴があります。
 
ヘム鉄サプリメントに「不溶性」と「水溶性」がある理由は、その製法の違いです。
 
一般的にヘム鉄サプリメントの原料である「ヘム鉄パウダー」は、豚の血液中にあるヘモグロビンタンパクを酵素分解し、その中にあるヘム鉄を抽出して作られています。
 
この酵素分解を行った水溶液には、グロビンタンパクを分解した際に発生した「ペプチド(アミノ酸がいくつか繋がったもの)」と、ヘム鉄が含まれています。
 
これを濾過して不要なペプチドとヘム鉄とに分離して出来たものが、ヘム鉄パウダーです。
 
 
不溶性のヘム鉄は、この酵素分解、濾過する際に、pHの調節と等電点沈澱という濾過法を用いてヘム鉄を沈殿させ、沈殿した不溶性のヘム鉄を回収して作られます。
 
不溶性のヘム鉄は安く大量に製造できることから、市販されているサプリメントの殆どは不溶性のヘム鉄が使用されています。
 
一方で水溶性のヘム鉄は、グロビンタンパクを酵素分解する際に得られたアミノ酸とヘム鉄がペプチド結合した水溶性のヘム鉄を、限外濾過膜という方法で濾過して抽出したものです。
 
限外濾過膜での濾過は操作が煩雑で、工業的規模での大規模生産には不向きです。しかも、得られるヘム鉄は非常に高価なものになります。
 
 
これら両者の大きな違いは、その吸収率です。
 
 
不溶性のヘム鉄は水に溶けないため、沈殿して吸収率が低くなります。ヘム鉄の吸収率を研究した結果で、「精製されたヘム鉄は吸収率が著しく低い」と言われているのは、不溶性であること(腸の中で沈殿してスタックする)と、ヘム鉄を精製する際の濾過方法で、等電点沈殿法などpHを変化させる方法や加熱殺菌されることで、ヘム構造の安定性が損なわれ、ヘム鉄の酸化や変性が起こるリスクが高まるためです。(ヘム鉄→非ヘム鉄化が起こりやすくなる)
 
そのため、不溶性のヘム鉄はヘム鉄の中でも吸収率が低い原材料です。
 
 
一方で、水溶性のヘム鉄は、グロビンタンパクを酵素分解した際に発生したアミノ酸とペプチド結合していることで水溶性となり、ヘム構造も安定化しています。
 
水溶性のヘム鉄は濾過時に「限外濾過法」という物理的に濾過する方法を用いられているので、pHの変化によるヘム構造のダメージもありません。
 
また、ペプチド結合していることでヘム構造が安定し、肉や魚に含まれている「ミオグロビン」から摂取するヘム鉄により近い状態になっています。
 
よって、ヘム鉄をサプリメントとして摂取する際は、「水溶性のヘム鉄」を選ぶ方が正解です。
 
 
では、ここで1つヘム鉄サプリメントの溶解実験をしてみましょう。K社とD社2つのヘム鉄サプリメントを用意し、カプセルから開けて水に溶かしてみました。
 
まず一つ目は、K社のヘム鉄サプリメントです。
 
 
このカプセルをシェイカー等の容器にあけ、水を注ぎます。
 
すると・・・
 
 
K社のヘム鉄サプリメントでは、水を注いだ瞬間に綺麗に水に混ざり、水が真っ黒になりました。水によく溶け、沈殿物もありません。
 
このことから、K社のサプリメントには「水溶性のヘム鉄パウダー」が使用されていることが分かります。(溶かしたヘム鉄の水溶液はもったいないので鼻をつまんでイッキ飲みしました・・・)
 
 
続いて、某有名なD社のヘム鉄サプリメントです。K社のヘム鉄サプリメントが高くて買えない!という方が、よく選ぶサプリメントですね。
 
 
同じくシェイカー等の容器にカプセルを開け、水を注ぎます。
 
結果は・・・
 
 
 
 
 
沈殿して全く混ざりません。水と鉄が分離し、固まっていることがよく分かります。
 
水を捨てても、底にヘム鉄パウダーが沈殿してしまっています。
 
このことから、D社のヘム鉄サプリメントには「不溶性のヘム鉄パウダー」が使用されていることが分かります。
 
 
この不溶性のヘム鉄を可溶化させるためには、高いpH及び低いpHが必要で、中性から酸性域では全く溶けません。
 
これは、不溶性のヘム鉄を吸収するためには強力な胃酸の分泌が必要であることを意味しています。これにより、例えば水を多く飲んで胃酸が薄まっていたり、胃酸抑制剤などの胃薬を飲んでいたり、カルシウムなどアルカリ性のもので胃酸を中和していたりすると、吸収が阻害されてしまう可能性があります。
 
ヘム鉄の吸収率に関する論文でカルシウムがヘム鉄の吸収を阻害する、しないなどの結果で意見が分かれているのは、このような要因が関係しているものと思われます。
 
 
先ほども解説した様に、不溶性のヘム鉄は水に溶けないため、腸の中で沈殿してスタックしてしまいます。先ほどの実験の結果が、そのまま胃や腸の中で起こっているのです。
 
また、構造が不安定なヘム鉄はヘム鉄から鉄イオンが分離して「非ヘム鉄化」するリスクも高くなり、より吸収率が低下する要因になります。
 
そのため、不溶性のヘム鉄と水溶性のヘム鉄では、ヘム鉄自体の質も吸収率も全く異なるのです。
 
よく、
 
「ヘム鉄パウダーの原材料は、2%のヘム鉄が含まれているものが良い」
 
と言われていることがありますが、ヘム鉄の質はヘム鉄の含有量だけでは量れません。安くて量が入っているものが良い物という認識は大きな間違いです。
 
ヘム鉄も含め、栄養素はきちんと吸収され、身体を作るための材料として使われて初めて意味があります。
 
分子栄養学ではヘム鉄の摂取を推奨していますが、ヘム鉄なら何でも良いわけではありません。きちんと質を見極め、分子レベルで栄養素の化学的特性や働きを理解することが重要です。
 
 
また、ネット上ではこのようなヘム鉄の特性を無視し、不溶性のヘム鉄も水溶性のヘム鉄も単に「ヘム鉄」というくくりで一緒くたに解説されている情報が多くあります。
 
わざと吸収性の悪い不溶性のヘム鉄を用いてヘム鉄を批判したり、「分子栄養学の実践は意味が無かった」などと批判したりするのはナンセンスです。
 
 
分子栄養学は「この栄養素を摂れば不調が治る」というような単純なものではありません。「貧血改善にはヘム鉄がいい」といった、安直な情報を元に見よう見まねで実践することは非常に危険です。
 
分子栄養学を実践する際は、自ら分子栄養学を学び、実践していってください。
 
長くなるので、ヘム鉄サプリメントの質の違いについてはまた次回解説します。
 
 
 
 
 

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