「私は京都で修復師をしております清川 廣樹と申します。
この世界に入って45年目を迎えます。
金継ぎというのは漆を使って壊れた物を修理して、そこに金で装飾をするそういう技法のことを言います。
漆で修復をした物を金であしらうようになったのは、特別感を持たせるより、長く使い続けること、より長く残そうとしたのが一番大きな原因だと思います。
金継ぎの技法を使うのはやはり器が中心ですね。
ご先祖さんが使っていた器であったり、お気に入りの器であったり、やはり何かの思いが入っている器の修理に使われてきましたね。
金継ぎをした箇所というのは、いわば一つの新しい景色となります。
日本人と漆というのは切っても切れない関係にあります。
漆の樹液自体は非常に貴重なもの。
日本の漆というものは、1本の木からコップ1杯をいただいた時点で伐採になります。
樹液自体が血液なんですよね。
それをいただいてしまうことによって漆の木の寿命を終わらせてしまう。
そして自然に対する感謝の思いをそこへ持ってきましたね。
その自然素材を人の手で時間をかけて手間暇をかけて加工する、それこそが自然との共存、持続可能な方法だと思っています。
物というのは形になった時点で壊れることは宿命として生まれてきます。
壊れること割れることそれは決して悪い事ではないと思っています。
私達自身も壊われたり欠けたり、それは日常のようにやってくることなんで、それを決して隠さない、不完全であるからこそ新しものが生まれると思います。
人の壊れた部分精神性も含めて、その修復に一緒に関われた、それをすることで自分自身の壊れた部分も一緒に修復ができているような気持になります。
自分自身ももう一度修復ができるんだとそれはいつまでも諦めてはダメだと思います。
自分のキャリア、自分の歴史を隠さない。
たとえそれが大きなアクシデントであってもそれは受け止めなければならない。
そしてそのアクシデントがあったから新しい自分がうまれるんだと、それは大きい思いですね。」