俳優の伊勢谷友介さんが大麻所持で逮捕されたとのニュース。こういうことがニュースになったときに必ず街の人の声が流れる。汚い言葉を使うが反吐が出るほどその声たちが嫌いだ。今日もニュースを見ていたら、「えーーショックー」「いい俳優さんなのに残念」などと道ゆく人がコメントしていた。直近で警察官の役をやっていたことに言及している人もいた(だからなんだの極致)。ドラッグは日本では違法だし健康を害すしお金が闇の世界に流れるし、よくないことだらけなのは明らかだ。だが、一視聴者である一般人が勝手に失望し批判するのは何かが違うと思う。どんな経緯でドラッグを使用するに至ったかは知らないが、彼は彼の仕事をして私たち視聴者はそれをみて楽しんでいた。彼にとやかく言えるのはとばっちりを食う共演者や制作者、事務所の人たち、家族などなど関係者だけだ。彼は現状、彼の仕事を全うしていた。ドラッグ撲滅の意味でニュースにするのは有名人で影響力もあるしありだろう。だが、こういったニュースはいつだってドラッグがどう人を変えるかやその恐ろしさを伝えるのではなく、使った人間を叩いたり、その影響や損害額を示す報道だ。ドラマ金八先生でドラッグを扱ったシリーズがあった。金八先生はドラッグを使用して我を失う生徒を抱きしめて、「ドラッグを憎め」と他の生徒に叫ぶ。「罪」はそんなものを作る人がいて、さらにはそれを売りさばこうとする闇の世界があることだ。芸能人の中でもよく「今いろいろな撮影をしていたりして、どれだけの人に影響があるか考えればわかるのに何故…」などと言ったことをコメントする人がいるが、ドラッグは中毒性があるから一度手を出すと抜け出すのが難しいのは周知の事実だ。やめられない止まらない。人間には分かっていてもやってしまう、やめられないことなど小さなことから大きなことまでたくさんある。マリファナとかと違ってただの好奇心でドラッグに手を出す人はなんとなく少ない気がする。しんどい現実から逃げる方法を誤ってしまった人を吊し上げて、ドラッグはたくさんの人に迷惑をかけるからやめましょうなんて報道、誰の心に響くのだろう。ドラッグがいかに危険なものであるかの教育は大体の人が受けてきていて頭では理解している。だがそれでも手を出してしまう人がいる現実は、ドラッグがこの世に存在し続ける限りなくならないと思う。いじめと同じだ。それほどこの世界は不条理なことで溢れている。ドラッグに手を出して抜け出せなくなってしまった人を、常用せざるを得ないそのサイクルを、たとえ逮捕という形であっても止められたことをよかったと思える世の中だったらいいのになぁと思う。憎むべき、批判すべきはドラッグそのものだ。

 

"誰かのことを批判したくなったら、この世界の全ての人が君のように恵まれてはいないことを思い出してみなさい。" −スコット・フィッツジェラルド−

 

「ドラッグに手を出すなんて理解できない」そう思える自分の人生に感謝すべきだと私は思う。