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建設、物流など幅広い業種の現場で活用が期待されるドローンの登録義務化が6月下旬に始まった。事故発生時の所有者の把握や悪質な利用の排除などが目的だが、登録制度を知らない利用者は多く、県内の関係者は周知不足を指摘する。機体に「リモートID」と呼ばれる電波発信装置を取り付けることも義務化されたが、装置の開発は始まったばかりで課題は山積しているようだ。
「登録義務化を知らない所有者はたくさんいると感じる」。静岡市葵区のドローンスクール「スカイファイトスタジオ静岡」でインストラクターを務める山岸毅さん(42)は話す。義務化に先立ち、過去に同スクールを受講した人に周知したところ、問い合わせが相次いだ。
作業現場の撮影にドローンを活用している同市葵区の建設業「ポスト」の赤堀達也専務(50)は「各地でドローンの事故が増えている。登録制度には賛成」としながらも「手続きは煩雑で、専門のスクールなどを利用せずに個々に申請するのは難しい」と指摘する。
リモートIDは無人航空機の製造番号や飛行時の位置、速度などを識別するための発信装置。どこに誰の機体が飛んでいるかや、法令を順守しているかが正確に判別できるようになった。だが、ドローンメーカーのイームズロボティクス(福島県)によると、リモートIDを生産している国内の事業者は数社しかなく、価格も1個4万円前後と高額だ。
「半導体不足も少ない生産に拍車を掛けている」と曽谷英司社長。ドローン生産の大半は中国大手が占めていて、リモートID対応型の機種はまだ一部にとどまっている。
国土交通省によると、登録義務化に関するコールセンターは現在もパンク状態。国交省航空局の担当者は「申請方法が分かりづらいという声は多い。機会を通じて丁寧に説明していく」とする。
■操縦を国家資格化 今冬にも
国は、ドローンなど無人航空機の操縦に関して国家資格化を進めている。人口密集地で機体を目視せず飛行させるなど、一定の条件下では免許取得が必要になる。今冬にも制度運用を始める予定で、今月下旬に制度の詳細を公表する計画。
国土交通省や経済産業省は、ドローンで物資や荷物を輸送できるようにするなど「空の産業革命」実現を目指していて、こうしたことが国家資格化や機体登録義務化の背景にある。「まずは山間部で試行したい」(国交省)考えで、実際に市街地でドローンが荷物を運ぶようになるのは数年先の見通しだ。
<メモ>無人航空機の登録制度 バッテリーを含め100グラム以上の機体について、国に登録することが義務化された。違反すると1年以下の懲役か50万円以下の罰金が科される。人口集中地区での飛行など航空法の規制対象も従来の200グラム未満から100グラム以上に拡大。国土交通省によると、昨年12月の事前登録開始から6月末までに約25万9千件の登録があった。2021年度はドローンに関する事故やトラブルが86件、国に報告されている
