長野県警は23日、撮影機能付き無人飛行機「ドローン」の本格運用を始める。事件・事故現場の見取り図作りなどに活用するためで、県警の交通鑑識担当の青沼正悟警部補(45)が開発した。
青沼警部補は無線操縦ヘリ愛好家。インターネットなどで独学して試作。試験飛行を重ねて、県内の業者に製作を依頼した。風に流されてバッテリーを浪費するのが難点で完成まで2年以上かかった。
ドローンは高さ約60センチ、幅約90センチ、重さ約6キロ。最高時速約80キロで半径2キロを約15分間、飛行できる。自動飛行するため、リモコン操作は不要だ。県警関係者は「これで犯人を逃がさない」。
青沼警部補は無線操縦ヘリ愛好家。インターネットなどで独学して試作。試験飛行を重ねて、県内の業者に製作を依頼した。風に流されてバッテリーを浪費するのが難点で完成まで2年以上かかった。
ドローンは高さ約60センチ、幅約90センチ、重さ約6キロ。最高時速約80キロで半径2キロを約15分間、飛行できる。自動飛行するため、リモコン操作は不要だ。県警関係者は「これで犯人を逃がさない」。

米国で商業利用が広がるが、課題も山積
軍用に使われてきた無人飛行機(ドローン)の商業利用が米国で広がっている。地図作製やデータ収集のための空撮、ネット通販大手アマゾンによる宅配など、新ビジネスのアイデアは百出の状態だ。コストの安さや手軽さの半面、プライバシーや安全性の問題から雇用喪失の懸念まで、課題も山積。米国内では規制を求める声が高まっている。【ルイビル(米中部ケンタッキー州)で清水憲司】
「販売は好調ですよ。低空で飛べるから雲にも邪魔されない。しかも安い。いくつかの点で有人飛行機に勝っています」。2月中旬、米中部ケンタッキー州で開かれた全米農業機械ショー。無人機メーカー大手トリンブルのジェローム・クーナン技術部長は自信たっぷりに話した。両翼の長さ約1メートルの無人機「UX5」は大型無線操縦のようだが、ソニー製の小型カメラを搭載し、時速80キロで飛びながら、2〜3センチ単位でモノを見分けられる高解像度写真の撮影ができる。
大規模経営で知られる米国の農業は、ハイテク化も急速に進展している。畑を細かく区切って土壌を分析し、肥料や殺虫剤、種子の最適な量をコンピューターで割り出して散布する。そこに無人機からの写真が加われば、病害や生育の状況を頻繁に把握でき、一段と収穫量を増やせる。無人機を買ったばかりの穀物農家ダンカン・ルーペさん(53)は「すごく便利だよ。安いものなら700ドル(約8万4000円)だから、もうたくさんの農家が買っている。5年後には大半の農家が無人機を持つようになるのでは」と話す。
2月上旬には、ワシントンで無人機愛好家グループが家族連れ向けのイベントを開いた。「さあ、次のスパイはこの人です」。司会の男性が冗談めかして言うと、小型カメラを積んだヘリコプター型無人機が次々に飛び立ち、ビルに見立てた段ボール箱の窓に近づいて、“ビル”の内部をモニターに映し出した。

今、「ドローン」と呼ばれる無人飛行機が世界的に注目を集めている。プロペラが複数ついた小型の電動マルチコプターが進歩し、コンピューターと結びついたからだ。マルチコプターは個々のモーターの回転数制御だけで、姿勢、方向、速度などすべての飛行制御ができる。複雑なメカは不必要なので低価格。またスマートフォンの大量生産の余波で加速度センサーやジャイロなどが安価になり、これらのデータをもとに内蔵のコンピューターで基本制御をさせ、操縦も簡単になった。従来の無線操縦ヘリでは空中の一点にとどまるだけでも相当の練習が必要だったが、ドローンならそういう基本制御はコンピューター任せ。「こっちに飛ばしたい」といった指示だけで簡単に操縦できる。
しかし問題は技術の進歩に運用ルールが追い付いていないことだ。米国は一見ドローン先進国のようだが、飛行機過密国ということもあり、高度122メートル以下しか飛べない。また肝心の商業利用が原則禁止。利用を急ぐ映画、農業、不動産業界などは米連邦航空局に申請して、その都度例外措置を取得しているが、日中の視界内飛行のみで、カメラ映像での遠隔操縦も禁止。航空機操縦免許も必要など規制は厳しい。
ドローン開発者が今目指しているのは、カメラ映像での遠隔操縦より進んだ、操縦者なしに遠くの目的地を目指して飛べる自律飛行。そうなれば、物流をはじめ多くのイノベーションが可能になる。
厳しい規制のせいで米国が出遅れたせいか、自律ドローンの研究開発で実はヨーロッパの方が一歩進んでいる。そこで米国では昨年、大学、空港、州などが主体となって六つの特定試験区域が選定された。この区域内では従来の規制なしで実験できる。一方、一般航空機と無人機を統合管制するシステムを米航空宇宙局(NASA)が開発するなど、出足が遅れたとはいえ米国はドローンが実用化される未来を見据えて布石を打っている。
日本では千葉大学の野波健蔵先生が世界的に有名だが、我が国全体での研究は盛んとはいえない。しかし実は日本の航空法ではドローンは用途に関係なく模型飛行機と同じ扱い。空港周辺などを除けば高度250メートルまでなら届け出なしに飛ばせる。目視操縦か自律飛行かといった制限もない。地権者が認めればいいだけなので、むしろ実験場設置では米国より楽なのだ。
野波先生によると自律ドローンの開発には山の中でもよいので直線距離で10キロとれる試験区域が必要だとのこと。国有林でも東京大学の北海道演習林でも、国が決断するだけで10キロとれる区域はたくさんある。日本としては珍しくもこの件では規制が問題ではなく決断だけだ。「空のイノベーション」に遅れないよう、国として直ちに試験区域の指定を決断すべきだ。
しかしその先、試験区域を出て実用となれば、安全基準、管理者資格、機種認定、点検規則、保険など飛行機と同レベルの制度を整備しないと有人航空機のように人家の上を飛んで許されるというわけにはいかないだろう。航空機より低高度を利用するという意味では、盗撮やのぞき見の恐れもある。規制緩和がはやりだが、新技術が社会に出て行くために必要なのは、往々にして「適切な規制」の方であったりするのだ。(東大教授)=