今日はビジネスに関する、ちょい真面目な話。

以前。スペイン現地法人で働いていた時のこと。当時は値上げはNG という雰囲気だったけど、思い切って値上げしたことがあります。


2005年、化学品の原料コストが世界的に高騰して来たとき、僕はスペインの現地法人で製品の値上げに踏み切るかどうか、判断に迷っていた。最終的に値上げを決定した。スペイン人の営業スタッフは大反対。「そんなことをしたら、シェアダウンしてライバルに先を越される。」という。「25年以上も値上げなんかしたことが無い、そんなのムリ。」とも。

しかしながら、これ以上の原料費の高騰を価格に転嫁出来なければ、この小さな現地法人の将来はないと判断、そしてスペイン人スタッフに言った。


「今ここで値上げを行わなかったら僕らは極めて厳しい財務状態に陥る。そうすれば我々の将来のみならず、家族の明日もなくなる。シェアダウンはするかもしれないが、それは更なる合理化とプロセスのコストダウンで乗り切ればいい。シェアダウンになった場合、その責任を君たちに押し付けない、だから思い切って、顧客へ値上げを通知しよう。」


その結果、予想通り半年程極めて厳しい減収に陥った。どの得意先が離れて行って、どの得意先が残ったかも、詳細に解析した。


ところが一年後、離れて行った筈の顧客がもう一回戻って来たではないか?


その理由は、顧客側が一旦当社からの製品供給を絶って、他社の安物を購入し使い始めた所、原料の不具合が原因で様々な品質上のトラブルを起こしたらしい。製缶塗料は一回クレーム出すと、後が大変なのだ。顧客は僅かばかりの値上げを嫌って、安物を購入することによる品質問題リスクを抱え込み、結果お客さんの信頼も落としてしまったようだ。品質が安定した原料を購入する方が、長期的に利益につながることの重要性に、ようやく気がついたらしい。


確かに



値上げは怖い。値上げを決めた当初は、シェアダウンや減収で相当苦しいが、製品力を信じて、顧客は戻って来ることを信じて、じっと1年くらい耐えて見ることだ。諦めらめず、今まで通り、お客さんとコミニュケーションを取り続けるのである。そうすると、今度戻って来てくれたとき、市場で圧倒的な信頼感を得ることが出来る。


製造業の経営は、常にコストダウンと品質の維持に努めることに限る。

これ、鉄則です!その後、価格も毎年見直して、センシティブに取り組むようになった。僕らは多くを学んだのでした。