私たちの病院では、もし患者さんがUnsafeな状況に立たされた時、PSI(Patient Safety Indicator)というリポートを書いて提出しなければならない決まりがあります。

PSIは日本語に訳すと、いわゆる「始末書」のようなものかもしれません。

(でも「始末書」だと響きが良くないので、ここではPSIとします。)

 

PSIを提出する理由は、その患者さんが置かれた「Unsafeな状況」をリポートすることによって改めて状況を把握し、今後同じようなミスが二度と起こらないようにするためです。

提出されたPSIはマネージメントに行き、マネージャーがその当事者とともに内容確認し、今後そのようなエラーが起こらないためにどのような対策を取るか、という話し合いがもたれます。

でもPSIは決してPunitive(罰する)ためのものではなく、見直しをしてKaizen(ちなみに日本語の「改善」は今やそのままビジネスの世界でも英語化していますニコニコ)する機会を与える目的があります。

 

でも、やっぱりPSIはリポートされる側にとっては嬉しいものではないことは確か、です。

 

しかし今回、私はこのPSIを書くことになりました。しかも同じナースに対して2回もガーン

 

ことの始まりは、あるナースBさんからシフト・リポートを受けた後のこと。

その患者さんは重度のHF (heart failure) を患っていて、a fib.を発症したこともあり、Tele (telemetry、これです)下矢印を付けていました。

 

それでシフトが始まってから、すぐにTeleをモニターしてくれているテクニシャンに連絡しました。

その患者さんの心拍の具合について尋ねてみるためでした。

(ちなみに病棟では、ハンズフリーでスタッフ同士いつでも連絡を取れるデバイスを使っています。デバイスに向かって「**を呼び出して!」と話しかけると、すぐに**のデバイスに直接つながります。アマゾンのAlexaみたいですね。携帯電話などのように手を使わずに話せるので本当に便利です^^)

 

するとテクニシャンが、

「え?その患者さんなら、今日の朝にdischarge(退院)したから、Teleは中止されたって報告を受けたよ。だからずっとTeleは作動していなかったけど?」

という返事をしてきました。

しかし患者さんはまだ退院もしていないし、TeleのオーダーももちろんActiveのままです。

 

その患者さんの担当だったナースBがまだ病棟に残ってチャートしていたので、「今日の朝、そのような電話をテクニシャンにした?」と尋ねるともちろん「No.」という返事が。

と、いうことは、おそらく何らかのミスコミュニケーションが起こり、日勤のテクニシャンが誤った患者さんのTeleをキャンセルしてしまったことになります。

しかしそのような誤りが起こったとしても、12時間ずっと患者さんのTeleがActivateしていないことに気づかないナースBもおかしい。

通常ならシフト中、何回かTeleのテクニシャンに連絡を取って患者さんの状況を尋ねるべきなのです。

しかもその患者さんは、かなり深刻なCardiac関連の病状を患っていたからです。

Teleが作動していなかったときに、もし深刻な疾患が起きたら正確に状況を把握できないし、しかも作動していなければ何のために患者さんにTeleをつけているのか(苦笑)

Teleのテクニシャンも「これは、PSIを書くべきだよね。」と言うことで、書きました。

 

そしてその夜、Teleのテクニシャンから

「同じ患者さん、今V tach (Ventral tachycardia) が起こったよ。」

と連絡がありました。

実はこの患者さんはその夜V tachを初めて発症してしまったのです。

でもその後すぐにNSR (Normal sinus rhythm)に戻りました。

ドクターにV tachについて連絡すると、患者さんのElectrolytesをチェックしよう、ということになり、すぐに血液検査をしました。

というのは、この患者さんは重度のHFを患っていたので、かなりの量の利尿剤を静脈から投与していました。

この利尿剤の難点は投与しすぎると血中のカリウム値を大幅に下げてしまうのです。

カリウム値が下がると、当然心拍にも大きく影響してしまいます。

 

検査の結果、患者さんのカリウム値はギリギリ正常値でした。

軽い症状が出ていたので少量のカリウムを投与するオーダーがでました。

しかし患者さんのカルテをチェックしていたら、この患者さん、高濃度の利尿剤を4時間で2回も投与されていることが分かりました。

オーダーには「2回目の利尿剤は1回目より少なくとも6時間待ってから投与すること」とちゃんと記されてあります。

利尿剤を短時間で投与するとDehydrationになって、もちろんElectrolytesのバランスも崩れてしまう副作用がいちばん怖いです。

 

そんなわけで同じナースBに対して、再度別なPSIを提出することになりました。

 

本当は提出したくないけれど、患者さんの安全のためなので仕方がありません。

 

しかもBはほかの患者さんに貼ってあったLidocaine patchもそのまま取っていなかったし

(患者さんのMARにはパッチを「Removed」とチャートしていたにかかわらず、です)

また、もう一人の患者さんに関しては、その日の朝のシフト・リポート時に「Port-a-cathをReaccesssする日だからお願いします」と再三頼んでおいたにもかかわらず、されていませんでした。

私がまた夕方に仕事に戻り、シフトリポートを受ける際、

「すっかりアクセスするの忘れちゃった!ごめんね。」と言われてしまいましたムキー

(抗がん剤投与に使われるPort-a-cathは、感染を防ぐために一週間ごとにアクセスし直すことが病院にて決められているのです。

患者さんによっては夜中に針をさされるより、日中にしてもらう方が良いに決まっています。

それで日勤のBに頼んだのですが「忘れた」とは!それでシフトチェンジ後、夜遅くなる前に速攻でその患者さんのPortをアクセスしました。

でもこのようなことは小さいことだし、患者さんの安全には直接影響がないことだったのでもちろんリポートはしませんが。

 

今回提出したPSIには直接Bの名前は書かなかったのです。

しかしマネージメントがその患者さんのチャートを診れば一目瞭然なんですが、、、

次回Bと顔を合わせるのは、正直言って気まずいです。

実は彼女は私よりも少し長く今の病棟で働いているベテランナースなのです。

普段は顔を合わせると、お互いいろいろ話すこともある人です。

でも患者さんの安全のためのリポートなので、きっとBも分かってくれるでしょう。

 

人様の命を預かる仕事なのだから、私もあらためて気を引き締めないと、と思った出来事でした。