私がメンバーの渡邉理佐と付き合い始めたのはここ3か月くらいのこと。
「付き合う、って?」
ある日、突然のこと。
お仕事終わりの理佐の手を引っ張って、行きつけの小料理屋さんに連れて行った。
そのときはなんだろう…何故理佐を誘ったのかはっきりとは覚えてはいないけど。
たまには生き抜きにメンバーと一緒にご飯に言ってみたいなぁ、そんなふうに思ってたときにたまたま同じ現場上がりの理佐が目の前に…
些細なきっかけだった。
ああ見えて、理佐ってすっごく優しいから。
急にわがままを漏らしたくなって衝動的に捕まえたら、嫌な顔せずついてきてくれるのだから。
あ、たまにはお酒とか飲んでみようよ?
いいよね、理佐も成人してるんだし。
勧めるままに呼び出しボタン押して、オシャレなカクテルを2色頼んで。
なんだか特別気分だった。
私もいつもより饒舌で、理佐もいろいろ包み隠さず話してくれて。
時間が経つにつれてお互いほっぺが真っ赤に染まってきたころ。
実は私たち誰よりも相性いいかもなんて。
そんな錯覚に後押しされるかのように、みるみる目の前に独り占めした彼女がきらきら輝いていく。
ほんわか幸せ気分に包まれているとき、
「ねえ、土生ちゃんって付き合ってる子いるの…?」
「え、いないけど」
「じゃあ、私と付き合ってみない?」
え、付き合うって?
あの、その、恋人とかってやつかな?
当たり前でしょ、他に何があるの!
……で、どうなの?
「うん、じゃあ付き合っちゃう」
それが始まり。
今になってみてすごく重要な決断を簡単にしちゃったな、って思う。
もちろん、理佐は好き。
メンバーとしてはもちろん、友達としても優しくて頼りになって。
恋人としても最初はお互いに戸惑いを感じずにはいられなかったけど、だんだん慣れてくるというか、一緒にいるのが私の中で日常みたいに感じて。
なんだか居場所が一つ増えたみたいな感じ。
実家とか、学校とか、欅坂。
そういう枠組みにぽんと一つ、渡邉理佐という個人が私の人生の一部に突然取り込まれてしまったかのよう。
今までよくしらなかったけど、特別感てこういうこと言うのかな。
都内出身の私には分からないけど地元を離れるときノスタルジックを感じるってみたいに、たぶん私の中にどでかい宝物ができた。
その宝物は私をひたすら情熱的にしてくれる。
でも、その宝物は両手で抱きしめて大事に扱わないといけない。
さすがに私でも、楽屋でメンバーがたくさんいるときに理佐を迎え入れたときはそう理解した。
いつもみたいにみいちゃんが、理佐に駆け寄っていって
「ねぇーりさー。けやかけのアンケートなんて書いていいかわからん。教えてー」
「教えたらアンケートの意味ないでしょ。自分で考えなさい」
「えー、理佐のケチんぼ」
みいちゃんは理佐の懐に入り込んで身体を揺する。
今までならそんなスキンシップ程度、何も感じない。というより遠くからにこにこして眺めていたくらいなのに…
は?理佐は私と付き合ってるんだけど!
そういうこと出来るのも恋人である私だけの特権なんだけど!
その光景にちょっとイライラするのも初めてだった。
いや、待て
みいちゃんは私が理佐と付き合っているなんて知らないはずだから、何も悪気なんて感じないのも無理はない。
そこまで言い聞かせが出来て初めて、ああやっぱりアイドル同士で付き合うってこういことなんだよなぁ。
ようやくその辛さを身に染みることとなった。
我慢できるわけないよ…
たった3か月なのに、気持ちを押し殺して押さえつけるのはこれ以上無理。
つい、隣りの席に座っている理佐の手を掴む。
制服の裾からちょこんとはみ出た透明感のある長細い綺麗な手。
それを私のものだと言わんばかりに強引に。
予想外だったのか、理佐はビクッと肩を跳ね上げた。
なんだかすごく悪いことしてるみたいな気持ちになってドキドキする。
普段は違うけどね。
二人きりだと理佐ももっと甘々になって、脳味噌がとろけるんじゃないかってくらい優しく囁いてくれる。
楽屋ならではのその反応に、私は特別感を抱いてしまった。
「…っ、ちょっと」
「いいじゃん、誰も見てないって」
「いやでも…」
対面に座ってスマホをいじっているゆいぽんとうえむーは何も気づいてない様子。
どこまで大胆になればこの二人は違和感を覚えるのだろう。
もしも目の前にいるメンバーが付き合っていたとしたら。なんて、そんなこと候補にも上がらない考え。
その甘い考えが私をもっと大胆にさせる。
「しつれーい」
「あ。こらっ瑞穂」
「え??」
咄嗟の名前呼びに、さすがに二人は顔を上げて驚いたみたい。
もう、理佐何やってんの。
「あ、最近瑞穂って呼ぶようになったんだよね、…あはは」
ナイスフォロー。
ゆいぽんもうえむーも、その理佐の弁解に何も疑問を感じずスマホに意識を戻したようだった。
ようだった、というのは私が理佐のふとももに頭を落としているから。机の上の二人の反応ははっきりと見えなかった。
明らかに理佐焦ってる。
いつもしてることだけど、今はいつもより心拍音が高鳴って聞こえるから。
わくわくする気持ちは留まるどころか、私にもっと欲望を知ってほしいと嘆いている。
「ねぇ…ヤバいって」
頭上から理佐のひそひそ声。
やだよ、もう止まらないんだって。分かってよ。
バレちゃいけないことだってのは私にだって分かるけど、意識はもっと理佐を独り占めしたい。
そのためにはむしろ逆で、理佐が私だけのものだってアピールしなくちゃな。
そんな歯止めが効かなくなった私の独占欲に止めを刺しにやってきた。
「ねえー理佐。私の自撮り入ってくれない?」
「え、今!?」
「今はなんか駄目だった?」
「いや、いいよ。ちょっと待っててね」
え、なんで理佐。
今は駄目だって言わないの?
私との時間より尾関との自撮り優先ってこと?
まさに火に油とはこういうことだったのだろう。
私は意識を正常に保てずに立ち上がって尾関に駆け寄った。
あ、って理佐が呟いたのが耳に入ったけど、私は止まることなく
「理佐とは私が付き合ってるの!!」
「はっ!?え?」
え、なに
って2期生含めみんながこっちに注目してきて初めて、あ、ヤバいって気づいたけどもう遅かった。
あはは…ごめん、冗談だよ!
って弁解しようと苦笑いして見せるけど、尾関含めみんな
「いや、さっきのはどうみてもマジでしょ」
「本当に付き合ってんのー?」
ざわざわそのことで持ち切りになっちゃったときはもう覚悟した。
横目で理佐を見たら机の上で頭を抱え込んでしまっている。
ぐぬぬ…って唸り声を上げて。
ごめん、理佐。
バレちゃったみたい…
「バカ瑞穂!メンバーみんなにバレちゃったじゃない」
「だからごめん」
「もう、本当に。あのとき私ほんとどうしよって焦りまくったんだから…」
「反省してまーす」
「今さら反省したって遅いんじゃーい」
ぺしって頭を叩かれる。
でもこんなことしたっていうのに、私はどうしようもなく幸せな気分。
ねぇ理佐はどうなの?
メンバーにバレたから、もう私とのお付き合いやめちゃう?
そんなわけないか…
だってまだその日のうち。
今こうやって、ちゃっかり膝枕許してくれてるのだから。
幸せの群衆
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すけさんからのリクエストで
「土生ちゃんと理佐のコンビで、秘密にしていた関係がメンバーにバレる」
というお題でした。
私は当然のこと、アメブロ内でもなかなかお目にかかることのないこのCP…
ひたすら土生ちゃんの心情を書くのが難しかったです(笑)
上手く書けてるのかな…?
なんか理佐がツンデレみたいになっちゃいましたが、良しとします!w
リクエストありがとうございました(^^)