塩分の過剰摂取が認知症リスクを高めるかも? | 感慨深々

感慨深々

医学教育の現場から見た本音をROPPONGIから発信!
臨床教育で重要なものは技術か?
それともその技を使う心か?
は、過去の話題。
これからは日本の医療を外から眺めた場合の問題点とその解決を述べてみます。

今日は久々に医療のお話でも・・。
最近過酷な救急現場を離れたせいか?

今まで思っていても仕事に追われて調べられなかった事をゆっくり時間を掛けて調べることが出来るようになったのは良いのですが、自宅だと論文本文にダウンロード制限があるので中途半端な調べ事になってしまう欠点があります。

今日の話題は題名の日本で昔から都市伝説的に言われてきた「塩分の過剰摂取とその影響」のお話です。

日本では昭和30年代後半から脳溢血死が多く、秋田の脳研など塩分摂取が特に多いと言われた東北地方を中心にいろんな研究や施設が作られました。

これは単純に

   塩分摂取過多=高血圧=脳溢血
ということが都市伝説的に言われるようになり、現代でもこの過程式を鵜呑みにしている方々も決して少なくありません。

 

でも、現代の高齢者の罹患問題は脳溢血から認知症へと変貌してきています。これは高血圧患者の管理が薬や食療法などの他、救急医学の発達で死亡数が激減したからだと言っても過言ではないでしょう。

しかし、寿命が長くなった分、この塩分摂取過多が認知症と深い関係があることが最近話題になっています。
今年の1月 米ワイルコーネル医科大学の研究チームは、、学術雑誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」で研究論文を発表しました。

内容はマウス実験を通じて、塩分の過剰摂取が大脳の血流や血管内皮機能を抑制し、認知機能障害を引き起こすとの事。

判りやすく説明すると塩分を過剰に摂取すると、組織の免疫や炎症応答を起こし、重要な役割を担うTh17細胞が小腸で増殖し、Th17細胞によってインターロイキン17(IL-17)が多く生成されてしまい、そのインターロイキン17が体内に循環することで、内皮機能不全や認知機能障害を促すということになります。

日本でも厚生労働省の2015年版「日本人の食事摂取基準」では、18歳以上の男性は1日あたり8.0グラム未満、18歳以上の女性は1日あたり7.0グラム未満と定めています。

また、世界保健機関(WHO)でも「塩分摂取量を1日あたり5グラム未満にすると、血圧が下がり、心血管疾患や脳卒中、心臓発作のリスクを軽減できる」と提唱しています。

が、これら指標はあくまでも 心血管疾患や脳卒中、心臓発作のリスクを軽減策ですね。

では認知症予防のためには?
ここで注目しなくてはいけないのは腸と脳を結びつける微生物、免疫系、神経系の塩分の影響ですね。
因果関係はまだ精査されていませんが注目される二つの発表があります。
その一つ目は フロリダ州立大学の研究結果では「腸から脳へのフィードバックが、感情を変化させ、行動への動機付けを行う」ことが解明されつつあるいう発表。

二つ目が、米デューク大学の研究チームは、摂取した食物の情報を腸から脳に伝達する新たな回路を発見したという論文です。

まだまだ推論の域を出ていませんが今後、腸と脳を結びつけている微生物、免疫系、神経系の役割や相互作用が徐々に明らかにされていくにつれて、既存の治療法や予防医学のアプローチにも大きな変化が出てくると思います。