阪急神戸線、とりわけ山側の風景は見ていて退屈しない。
いや、思い出があるから退屈しないのだろう。

手にしていた文庫本をかばんにしまい、外に目を向ける。MP3プレーヤーに繋がれたイヤホンからは女性デュオの曲が流れている。

三宮に着くと車両に乗っていた大半の人が下車する。
三宮を出発すると地下に潜る。気温は32℃か。あのときは確か18℃だったな。山本さんはもう大学を卒業したはずだ。どうしているのだろう。
そんなことを考えている間に駅に着く。山陽電車に乗換だ。すべてが懐かしい。東出口に向かうエスカレーターと階段。おばさんのアナウンス。大音量のアナウンスのおかげで利用することは皆無に等しい山陽電車、特急姫路行きの停車駅を覚えたほどだ。
乗換えと共に思い出の終着点でもあった。もういいや。そう思って文庫本を取り出す。山陽電車に揺られながら。





たたきほうき。