開演早々に精神ダウンしてしまった。
疲労が一気に訪れた。
ここで無理してもしょうがない。
身体の欲するままに休むことにした。
次に気が付いたときは、義経の出の前。
朧ながらに鎧の影を観た。
後に出てきた坂東巳之助の義経の良さにハッとする。
貴公子ならではの優雅さと余裕。
戦の天才らしい鋭さ。
上手さに感動。
意識も大分はっきりとしてきた。
中村歌昇は播磨屋の後継としての道を進んでいる。
重厚な芝居を良く演じていた。
が、半分近く見られていないので残念。
ラストの「十六年~」も感動した。
莟玉くんと坂東新悟の活躍も半分以上、見られていない。
本当に残念だが、今の調子では仕方がない。
しかし、莟玉くんの器用さというのだろうか。
どんな役にもスッと入っていき、共演者とのフィット感の高さも感じた。
集中力が半端ないのだろう。
坂東新悟。
私はこの人について言及したことがない。
何故なら語ることがなかったからだ。
何を演っても優等生的にこなす。
なので特に言うことがない。
そんな人も今回は藻掻いているのがわかった。
ある程度の年齢の子を持ち、それを失う母。
しかも生首まで目撃してしまう。
そんな役なのだから難しかろう。
-*-*-* -*-*-* -*-*-* -*-*-*
出演者はいずれも稽古不足などは無いはずだ。
不足なのは経験だが、それをこの公演で言ってしまっては身も蓋もない。
言うべきことではない。
ならば、現時点での彼らとして最高点なのではなかろうか。
そうして、常に最高点を目指していくからこそ、いずれ”名人”の文字が身体に宿るのだ。
そこに向かっていくのであれば、将来に中村歌昇が中村吉右衛門を襲名したって、当然良い。