開演早々に精神ダウンしてしまった。

疲労が一気に訪れた。

ここで無理してもしょうがない。

身体の欲するままに休むことにした。

 

 

次に気が付いたときは、義経の出の前。

朧ながらに鎧の影を観た。

後に出てきた坂東巳之助の義経の良さにハッとする。

 

貴公子ならではの優雅さと余裕。

戦の天才らしい鋭さ。

上手さに感動。

 

意識も大分はっきりとしてきた。

 

 

中村歌昇は播磨屋の後継としての道を進んでいる。

重厚な芝居を良く演じていた。

が、半分近く見られていないので残念。

 

ラストの「十六年~」も感動した。

 

 

莟玉くんと坂東新悟の活躍も半分以上、見られていない。

本当に残念だが、今の調子では仕方がない。

 

 

しかし、莟玉くんの器用さというのだろうか。

どんな役にもスッと入っていき、共演者とのフィット感の高さも感じた。

集中力が半端ないのだろう。

 

 

坂東新悟。

私はこの人について言及したことがない。

何故なら語ることがなかったからだ。

何を演っても優等生的にこなす。

なので特に言うことがない。

そんな人も今回は藻掻いているのがわかった。

 

ある程度の年齢の子を持ち、それを失う母。

しかも生首まで目撃してしまう。

そんな役なのだから難しかろう。

 

 

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出演者はいずれも稽古不足などは無いはずだ。

不足なのは経験だが、それをこの公演で言ってしまっては身も蓋もない。

言うべきことではない。

 

ならば、現時点での彼らとして最高点なのではなかろうか。

 

そうして、常に最高点を目指していくからこそ、いずれ”名人”の文字が身体に宿るのだ。

 

そこに向かっていくのであれば、将来に中村歌昇が中村吉右衛門を襲名したって、当然良い。