歌舞伎座新開場十周年

團菊祭五月大歌舞伎

 

 

今回の菊之助の新三、良かった。

何というか、、チャラさがあった。

 

前に国立劇場で観た際にはそれを感じたかしら。

演技なのか、彼の本性が垣間見えたのか。

 

 

 

 

菊五郎のおとっつぁんや他の役者は、「新三」という様式美を追求した芝居をする。

田舎出だが、ちょいと鯔背、、、そんな感じ?

 

菊之助もそれをやっているんだろうけど仄かにチャラい。

これが新三という男にフィットしていると思う。

 

女を拐って金にしようとする奴だ。

そういう雰囲気があって然るべきとも思える。

 

歌舞伎町とかの繁華街には、女を食い物にする(それもツラの良い)男が沢山いる。

そういう連中と同じ。

 

そんな性根だから、永代橋で忠七を裏切る姿も自然だった。

今までは唐突なこの芝居に、少しく違和感を覚えたのだが、今回はすっきりハマった。

 

 

勝奴の尾上菊次もチャラい。

 

国立劇場での六段目の中村松江(女衒役)もそうだった。

女を金にする役どころはそれでいい気がする。

 

 

この芝居に出てくる大家は、私にとって市川左團次丈だった。

「左團次丈といえば南郷力丸」というのをよく聞いたが、私にとってはこの役だ。

飄々として大らかで、そして強欲な了見が楽しかった。

 

今回は河原崎権十郎がリズミカルに演じていて良かった。

しかも役者の実年齢差も程よく、リアルさを感じられた。

 

この大家が、悪党を住まわせておくのは何かの時(金儲け)に役立つからだと言う。

 

これを聞いて今の議員や都知事が全くこの了見なのだと気付いた。

彼らは世間のトラブルをネタに自分の手柄を立てて、飯を食う。

 

この芝居は人間の欲望を見事に活写しているんだね。

 

 

あと、市村萬次郎の婆が最高だ。

この方の婆はいつも素晴らしい。

 

 

菊之助と権十郎。

「髪結新三」の新たな一面を引き出しているように思えた。