今…、主人はテモダール280mg服用までの約30分間を、
ひたすらタブレットでネサフするつもりのようです;

先にサッサと寝ようかとも思ったのですが(ひどい妻ですね)、
少しだけ主人の抗癌剤nightにお付き合いして、読書感想文などを書いてみる事にします。

興味のある方、寝物語にどうぞ…







主人と私とで「これは面白い!」と評価が一致した本は…

$記憶の深淵VS脳腫瘍・脳幹グリオーマ

【王妃の離婚】佐藤賢一(直木賞受賞作)でしょうか。
司馬遼太郎以外では、この一冊だけかもしれません;。



私は気に入った本の、同じ個所を繰り返し執拗に読み返す癖があります。

惹きつけられ、魅せられたのは…ラストシーンよりも、寧ろ第1章でした。

物語の舞台は15世紀末のフランス。

主人公は―中年の弁護士。

恋愛小説とも思えるのですが、書籍紹介は傑作法廷サスペンスです。
(中世の法廷裁判を題材にした小説は今までになく、かなり斬新でした)






フランス王妃ジャンヌは、その婿王から離婚を申し立てられるのですが、
彼女はそれを頑なに拒み、抗戦の構えをとります。
要するに…彼女は夫を愛している(?)ので離婚したくはないのです…。


ちなみに王妃ジャンヌの父親は…前フランス王ルイ11世。
前王は情け容赦無く政敵を血祭りに上げる暴君でした。

恐怖政治を強いた前王に恨みを抱いているものは数多く、

主人公の弁護士フランソワ・ベトゥーラスも、実は暴君によって圏外へ追いやられた被害者です。

なので当然フランソワも皆と共に「ああ、いい気味だ」―と、
離婚される暴君の娘を見下します。





故に、

この法廷にかつての暴君の娘を庇うものなど誰もいない。

誰があんな醜い王妃の弁護などするものか!「見ろ、あの醜女、離婚されて当然だ!」
醜い、醜い王妃…、聖サンドニ教会の傍聴席から嘲笑が漏れる…。

かつて暴君の重臣であった者さえも、
時の趨勢を見計い、彼女に手を差し伸べようとはしない。

自分は美しくないことを承知しています、…と、

王妃の震える声が聖堂にか細く響いても…もはや彼女を救う者などいない。






弁護士フランソワは、最初は冷ややかに見物するつもりだったのです。

その筈、だったのですが、


―うなだれ、伏せたまつ毛が怯えて震える。―

あまりに哀れで孤独な王妃の姿に…

弁護士としての庇護本能が、結果的に彼本来の闘争心を燃え上がらせてしまいます、

「この女を弁護する者が、この場に居るのか?」との判事の問いかけに…、



【言葉だけは捨てられない!
青春時代の記憶を全て諦め捨てておきながら、
ブリュッセルにまで手を回され、卑劣な暴君を告発できなかったことだけが、
今もって無念な心残りとなっている。
言葉だけは捨てられない!沈黙だけは耐えられない。
愚かと承知していながら、あえて口に出す人間をこそ、
人は真にインテリと呼ぶのではなかったか。<本分より抜粋>】


中年弁護士フランソワは聖堂に響き渡る大声を張り上げます、


「 弁護士は俺だっ!」







第1章から、強烈に読み手の心を揺さぶってきます。
ラストは当然この冒頭シーン以上の衝撃と感動が約束されている筈なので、
本当にグイグイ読ませます。

もちろん裁判法廷以外の好奇要素も随所にあり、

中世における禍々しい因習…中世の離婚裁判における「処女検査」。
婚姻の証拠に破瓜の血で汚れたシーツを初夜の翌朝に披露するという、
信じられないようなおぞましい習わし…

等々、読み手の好奇心を飽きさせない、怖気を振るうような暗黒の儀式も紹介してくれます。

ああ、怖いですね…;





でも何はともあれ、やっぱりね…



圧倒的に自分に不利益で、どんなに絶望的な状況でも、

そこから、か弱き女性を救わんとする男性って…いいものですね~^^





それではまた。


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