原子力発電所の対外売り込みに関してブレまくる菅直人首相の発言一日も早い退陣を/歳川 隆雄
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| 13日、「脱原発依存」発言をする菅直人首相〔PHOTO〕gettyimages |
「もう一度、きちんとした議論がなされなければならない段階に来ている」と、原発輸出の見直しが必要との考えを示した。これもまた、先の「脱原発依存」発言(13日の記者会見)同様、首相の「個人の考え」だと言い募るつもりなのか。
菅首相は昨年10月1日、ズン・ベトナム首相との日越首脳会談で総額1兆5000億円に及ぶ日本製原発の対越輸出の合意に達し、「日本経済再生にとっての光明である」と明言していたのである。そもそもこの原発受注は、菅首相の肝いりで発足した新成長戦略実現会議(議長・菅首相)が打ち出したパッケージ型対外インフラ輸出戦略の"目玉"であった。もちろん、3・11東日本大震災による東京電力福島第一原発事故によって、当初予定の今年4月の正式成約は今秋以降に順延となった。それでもベトナム政府は、同国の第2期原発建設について日本製原子炉の導入方針に変わりはないと言明しているのだ。
それだけではない。我が国有数の原子炉メーカーである日立製作所は14日、バルト3国のひとつ、リトアニアが新設する原子力発電所について、受注に向け優先交渉権を獲得したと発表した。その詳細は、日立・米GE(ゼネラル・エレクトリック社)連合が130万kW(キロワット)最新型沸騰水型原子炉(ABWR)の2020年稼動を目指し、同国北東部のビサギナスに原発を建設するというものだ。
リトアニアのビサギナス原発受注を正式成約まで持ち込めれば、原発新設を予定する周辺国の北欧・フィンランド、同じバルト3国・ラトビアでの受注可能性にも弾みがつく。さらに、3・11以降も日本製原子炉の導入を繰り返し表明しているトルコと中東での原発ビジネスの鍵を握るヨルダンの両国での受注も期待されている。
このように日本はオールジャパン体制で、原発大国のフランスをはじめ、米国、韓国などと鎬を削って対新興国原発輸出促進に傾注してきたところに、菅首相の突然の原発輸出見直し発言が出来したのである。トップセールスを推進してきた菅首相のこの発言には、原発プラント輸出関係者は驚くと同時に、深く失望したのは当然だ。経団連(米倉弘昌会長)など経済界を筆頭に、当該の日立、東芝、三菱重工の原子炉メーカーやプラントメーカーなどから総スカンを食らっている。オールジャパン体制構築に力を注いできた経済産業省も強く反発している。
福島原発事故による放射能汚染水除去など収束に向けた対応が遅れている現状から国民の多くが「脱原発」に心情的に傾いているのは事実である。だが、「反核・脱原発」をシングルイシューとした衆院解散・総選挙に踏み切るチャンスを担保するための"政治発言"としての国会答弁であったとすれば、断じて許されることではない。菅首相は自ら天守閣に火を付けるタイプだとされるだけに、「脱原発」発言が原発輸出に暗雲をもたらし、それが日本経済再生に致命的なダメージを与えようが関知しないということなのだろう。
そして「脱原発」を貫くことで日本の既存原発54基全てが停止状態となり、電力の安定供給に不安を抱く日本のトップ企業が税制面でも好条件を示され、韓国の李明博政権が設置した工場特区への生産拠点移転に踏み切っても、関知しないというのだろうか。事実、韓国はいま世界トップレベルの炭素繊維(カーボン)技術を持つ東レに対して移転を強く働きかけている。
それだけではない。既存の原発技術者の大量海外脱出も指摘され、さらには東大工学部原子力工学科への入学希望者も減少しているのだ。簡単に言えば、菅首相の一連の発言は「ヤル気」のある人たちのモティベーションに水を差すばかりなのだ。このことを、まさに「国益を損ねる」というのである。一日も早い退陣を願うばかりだ。
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