ブルートレインでも2009(平成21)年に廃止された「富士」「はやぶさ」などが2階建て列車となっていましたが、併結区間のヘッドマークは「富士/はやぶさ」という複合デザインとなっていました。

(EF65 1126/EF66 53・下関総合車両所・2009年11月7日)
この複合ヘッドマークが登場したのは1984(昭和59)年のことです。1975(昭和50)年に東京発着でなおかつ直流区間以外のブルートレインのヘッドマークが廃止されました。しかし同じ東京発着でも異なる愛称を持つ2階建て列車「いなば」「紀伊」(のちに「出雲」「紀伊」にはヘッドマークが装着されていませんでした。

(「紀伊/出雲」EF65 1136・東京・1982年8月)
そして1984(昭和59)年2月1日のダイヤ改正に国鉄九州管内を走るブルートレインのヘッドマークが復活しましたが、この改正では「あかつき1・4号」の佐世保編成が「明星」に変更され、異なる愛称の2階建て列車となることになっていたので、この列車のヘッドマークがどうなるのかが注目されました。
この疑問に対して国鉄は、
「ふたつの愛称を併記すればいいんじゃね」
と思ったようで、こうして「明星/あかつき」のヘッドマークが登場しました。

(「明星/あかつき」ED76 56・鳥栖・1984年8月)
イラストも「明星」と「あかつき」のデザインをうまく合成しています。このヘッドマークは鳥栖以東で使用され、鳥栖からさきは「明星」「あかつき」それぞれのヘッドマークに交換していました。
このアイディは当時はかなり斬新でした。そして1985(昭和60)年3月のダイヤ改正ですべてのブルートレインのヘッドマークが復活。EF65形が牽引する直流区間にも「明星/あかつき」マークが登場しました。しかし1986(昭和61)年に「あかつき1・4号」「明星」ともに臨時化されて併結運転は解消。このヘッドマークは消滅してしまいました。
1980年代からブルートレインの衰退は続き、徐々に運転本数も編成両数も減っていました。それは東京発着の九州ブルトレも例外ではなく、1999(平成11)年12月4日から「はやぶさ」と「さくら」の併結運転を開始しました。そして複合ヘッドマークも復活しました。
「さくら/はやぶさ」のヘッドマークは2種類あります。東京~下関間を牽引するEF66形にはまったく新しいイラストデザインのヘッドマークを装着しています。

(「さくら/はやぶさ」EF66 47・早川~根府川・2005年2月17日)
「さくら」は淡いピンク色で「はやぶさ」は淡いグリーンと、かなり地味な色合いになっていましたね。
一方九州では従来のデザインを文字通り複合しています。

(「さくら」ED76 66・多良~肥前大浦・2005年2月25日)
もはや合成といってもいいのではと思うほど。
しかも、単独運転区間でもヘッドマークを交換しなかったので、写真のように長崎本線でも「はやぶさ」の文字が見られました。
続いて2000年3月11日のダイヤ改正で「あかつき」の佐世保編成を廃止し、「彗星」との併結運転が始まりました。この結果山陽本線内で「彗星/あかつき」の複合ヘッドマークが誕生しました。

(「あかつき/彗星・EF66 46・有年~上郡・2005年9月18日)
「彗星」のデザインは単独時代と同じく青基調ですが、「あかつき」は区別のためか赤基調になっていました。九州内はそれぞれ単独列車なので、ヘッドマークは変わっていません。
2005(平成17)年3月1日のダイヤ改正で「さくら」が廃止されたため、「さくら/はやぶさ」の併結運転が解消されましたが、新たに「富士/はやぶさ」の併結運転が始まりました。その結果EF66形に「富士/はやぶさ」の複合マークが用意されました。

(はやぶさ/富士」EF66 53・大阪・2009年3月14日)
青基調に統一されていますが、イラストのデザインと文字でうまく「富士」と「はやぶさ」を複合させていて、個人的に好きなデザインでした。
こちらも九州内は単独列車でしたので、「はやぶさ」の単独ヘッドマークが復活しています。
2005年10月1日に「彗星」が廃止され、代わりに「なは」と併結を始めました。そして「なは/彗星」の複合マークが登場。

(「あかつき/なは」EF66 47・大阪・2008年3月5日)
「彗星」の部分が「なは」に変わった感じで、色調もそのままでした。
一方九州内でも複合ヘッドマークが復活しています。

(「なは/あかつき」ED76 66・大野城~水城・2007年2月18日)
デザインは合成タイプとなり、九州内はこの複合マークを使用していました。しかし2008(平成20)年3月15日のダイヤ改正で「あかつき」と「なは」が廃止されて関西ブルトレの幕を閉じました。
さらに2009(平成21)年3月14日のダイヤ改正で「富士」「はやぶさ」が廃止されたことで九州ブルトレも終焉を迎え、複合ヘッドマークも消滅しました。
複合ヘッドマークは衰退するブルートレインの復権を賭けた努力と、終演への歴史とともに歩んできた感があり、ブルートレインを象徴するアイテムのひとつだと思います。