
JR東日本のプレスリリースより
「スマート電池くん」を実用化し、烏山線に導入します [PDF/108KB]
形式のEVとはEnergy storage Vehicleの頭文字をとったものです。蓄電池駆動電車は非電化区間の環境負荷低減策として研究開発を進めて来た電車ですが、JR東日本はNE Tarinという試験車を使用して、様々な非電化区間の環境負荷低減技術研究を進めてきました。
NE TrainのNEとはNew Energyを意味します。その第1段階はシリーズ式ハイブリッド気動車キヤE991形で、2001(平成13)年に登場しました。

(キヤE991-1・大宮総合車両センター・2004年5月29日)
シリーズ式ハイブリッド車のシステムはディーゼルエンジン(331kW出力)、DM927発電機(180kW)リチウムイオン電池(10kWh容量)、CT905主変換装置(VVVFインバータ制御)、MT936主電動機(95kW)2個で構成されています。
ディーゼルエンジンは発電にのみ使用する点は電気式気動車と同じですが、大きく異なるのはディーゼルエンジンで発電した600Vの電力を走行と充電に使用するほか、回生ブレーキの電力も充電に使用する点にあります。
シリーズ式ハイブリッド気動車は2007(平成19)年にキハE200形として実用化されました。

(キハE200-1・小淵沢~甲斐小泉・2007年8月25日)
システム構成はキヤE991形を量産化したもので、DMF15HZ-Gディーゼルエンジンと15.2kWh容量のリチウムイオン電池、CI16主変換装置、MT78主電動機2台で構成されています。
2010(平成22)年には長野地区、秋田地区、青森地区の観光用ハイブリッド車としてHB-E300系が登場しました。

(HB302-4・津軽宮田~奥内・2010年12月4日)
システム的にはキハE200形と変わりませんが、JR東日本はHBという新しい形式を与え、気動車と区別することにしました。
ハイブリッド車は従来の気動車よりもCO2の排出量を約10%低減させることはできましたが、ディーゼルエンジンを使用する以上排出ガスはなくなりません。またディーゼルエンジンは潤滑油などの油脂類、回転摩擦部品が多いためメンテナンス面での課題が残ります。
そこでNE Trainはディーゼルエンジンを使用しないシステムの研究第2段階として、燃料電池ハイブリッド車へ移行し2006(平成18)年に改造されました。
燃料電池ハイブリッド車はディーゼル発電セットを燃料電池(65kW)2台と水素タンク(270リットル・35MPa)に交換したもので、走行システムはハイブリッド車と同じです。リチウムイオン電池は19kWh容量で屋根上に搭載されました。
2008(平成20)年に本線試験走行用にクモヤE995形という形式を与えられました。つまり燃料電池ハイブリッド車は電車という扱いになったわけですが、このシステムは実用化されていません。またクモヤE995-1も2007(平成19)年に除籍されています。
NE Trainの第3段階が蓄電池駆動電車で、2009(平成21)年に改造され、長野総合車両センターで試験を行なった後、2010(平成22)年にクモヤE995-1として復籍(新製扱い)。スマート電池くんと命名されました。

(クモヤE995-1・岡本~宝積寺・2012年2月21日)
スマート電池くんのポイントは600V 163kWhのリチウムイオン蓄電池を搭載し、非電化区間走行の電力源とするものです。
スマート電池くんはパンタグラフを搭載。直流1500V電化区間では普通の電車と同じように架線から集電して走行すると共に、蓄電池への充電も行ないます。

(クモヤE995-1・宝積寺・2012年2月21日)
非電化区間では蓄電池の電力のみを使用することになります。もちろん回生ブレーキで充電することはできますが、徐々に充電量は減っていくことになります。そこで要所に急速充電設備を備えて、パンタグラフで充電を行ないます。

(烏山駅・2012年2月21日)
大容量電流に対応するため充電設備は鋼体架線を採用し、パンタグラフは集電舟を倍増させています。約10分の充電で約20km走行することが可能だそうです。
このような試験を経て実用化されるEV-E301系は全電動車2両編成となります。

もっとも0.5電車なので事実上1M1T。蓄電池は95kW容量となるようです。CO2排出量は気動車の約40%となるようです。
航続距離などの課題もありますが、短距離非電化区間ならば効果絶大かもしれません。そしてEV-E301系は最終的には烏山線のキハ40を淘汰すると発表されています。

(キハ40 1007・宝積寺~下野花岡・2011年1月8日)
環境負荷低減はいい話ですが、ディーゼルサウンドが聞けなくなるのはちょっと寂しいですね。