フリーゲージトレインは実現するのでしょうか? | はやこま すていしょん!

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更新頻度は遅めですが、日々の出来事や趣味的なことを書いていこうかなと思っています。若干鉄分は濃い目の予定(笑

新幹線のないエリアから乗り換えなしで新幹線に直通するという構想として、成功を収めたのはJR東日本の山形、秋田新幹線です。両線とも元々は在来線で線路幅は狭軌の1067mmでしたが、新幹線と同じ標準軌である1435mmに改軌して、東京への直通運転を実現させました。
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(新庄・2009年12月6日)
新在直通運転と呼ばれるこの方法はミニ新幹線とも呼ばれていますが、この方法場合、線路の幅を広げる改軌の工事費用が多大にかかるほか、他の在来線との運転に制限がついてしまいます。そこで、研究が進められているのがフリーゲージトレインです。
フリーゲージトレインは車輪の左右間隔を可変させる電車で、1435mm軌間の線路と在来線の1067mm軌間の線路の間に設けられた軌間可変施設を通過すると、そのままそれぞれの軌間に直通することができるというものです。メリットは地上設備の投資を最小限に抑えることができるという点ですが、デメリットとしては車両の構造が複雑になり、重量も増加するため軌道へのダメージも大きくなるなどです。
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(多度津工場・2009年5月23日)

このフリーゲージトレインはスペインのタルゴ社が昔から実用化していましたが、1993(平成5)年にタルゴ社のライセンスを住友金属工業が得て、翌1994(平成6)年から鉄道総合技術研究所が開発を行なって1998(平成10)年にGCT01という第1次試験車が製造されました。なおGCTとはGauge Convertible Trainの頭文字を取ったものです。
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(小倉工場・2007年2月18日)

GCT01は3両編成で製造されています。GCT01-1は直接駆動モーター(DDM)方式を採用していました。
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(多度津工場・2009年5月23日)

台車の形状がかなり物々しいのですな。軸箱にリンクみたいなものがついていますが、キハ283系のリンク式自己操舵システムにそっくりです。
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(多度津工場・2009年5月23日)

GCT01-2は通常のカルダン駆動だったようです。
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(多度津工場・2009年5月23日)

軌間可変のための車軸が物々しいですね。
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(多度津工場・2009年5月23日)

CGT01-3は1と同じくDDMでしたが、ボルスタ台車となっています。奧の台車がGCT01-3用です。
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(多度津工場・2009年5月23日)
GCT01は1999(平成11)年~2006(平成8)年まで山陰本線、日豊本線、予讃本線などで試験を行なったほか、アメリカコロラド州のTTCIプエビエ実験線での耐久試験、新下関での軌間変換試験と山陽新幹線新山口~新下関を最高速度210km/hで試験を行ないましたが、高速運転時の台車の振動などの課題が残ったようです。
GCT01は試験終了後、JR九州小倉工場からJR四国多度津工場に移されて保管されています。

第1次試験車両に引き続いて2007(平成19)年に製造されたのが第2次試験車で、製造当初は無番でしたが現在はGCT01-201~203と名乗っています。
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(小倉工場・2010年10月17日)

GCT01-200は2007(平成19)年から小倉工場をベースに在来線での走行試験を行なって、2009(平成21)年から新八代での軌間変更試験、そして九州新幹線内で試験を行ないました。
GCT01-200はアルミ車体を採用して、全車カルダン駆動に統一。また車体傾斜システムも搭載して、新幹線内275km/h、在来線130km/hを目標としましたが、新幹線区間では270km/hを達成したものの、在来線のカーブ区間では80km/h程度までしか出せなかったため、2009(平成11)年で一旦試験を終了。
台車を改良するとともに、JR四国多度津工場を基地として2011(平成23)年から走行試験を再開。現在は耐久試験を行なっています。
GCT01-201はシングルアーム式パンタグラフを搭載。自重は45t。
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(坂出・2012年6月11日)

台車は運転席側に写真のGT1台車を装着し、連結面側にGDT3台車を装着しています。
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(坂出・2012年6月11日)

GCT01-202は自重46.2t、かつてはパンタグラフを装備していましたが、現在は非装備で低騒音碍子だけが残っています。
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(坂出・2012年6月11日)

台車はWDT950。形式名から推察するとJR西日本の試作台車のようですね。形状から見ると軌間可変式なのかわかりません。
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(坂出・2012年6月11日)

新在直通用のステップがついていますが、扉の位置がホームよりかなり高いのが気になりますね。
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(坂出・2012年6月11日)

GCT01-203は自重45t。それにしても現在の新幹線のデザインと比較してもの凄く原始的な先頭部デザインをしていますね。空力性能はまったく現代にそぐわないと思います。
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(坂出・2012年6月11日)

台車は両方ともGDT3を装着していました。
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(坂出・2012年6月11日)

JR四国の振り子車8000系と比べるとこんなに大柄です。
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(坂出・2012年6月11日)
JR四国では振り子機構と低重心車体が必須なのですが、車体傾斜システムで重心が高いGCT01-200ではちょっと辛いかもしれませんね。

現在、ほぼ毎日耐久試験をしているGCT01-200
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(丸亀~讃岐塩屋・2009年6月11日)
ですが、現時点では最高速度が300km/hに届かないことと、軌道攻撃を懸念して、山陽新幹線の乗り入れにはJR西日本が難色を示しており、九州新幹線長崎ルートや、四国からの山陽新幹線乗り入れの可能性は不透明。
その一方でJR西日本は大阪から北陸新幹線へフリーゲージトレインでの乗り入れを目論んでいるようです。たしかに北陸新幹線の最高速度は260km/hなので問題は少ないですし、当初は金沢から、そして将来的には敦賀からの乗り入れならば関西~北陸の所要時間短縮は期待できるかもしれませんが、果たしてどうなることやら。