
500系900番代「WIN350」の試験結果を元に320km/h運転を目指して、300系の4隅をそぎ落としたような円筒形車体と、航空宇宙研究所の流体力学(CFD)による解析で割り出した15mの先頭部長さを、断面積変化率を小さくしながら実現させた流麗な姿は本当にかっこいいと思いました。
しかし客室が小さくなる先頭車の先端扉が省略され、各車の座席数が300系、700系、N700系と一致しないことから今年の2月28日でのぞみ運用を撤退したのは残念です。
そんな500系の数々の技術の中でもとりわけ興味深かったのは、翼形パンタグラフですね。

風切り音による環境騒音を低減させるために、翼断面形状のマストを採用。さらにふくろうからヒントを得たと言われるボルテックスジェネレーターで小さな空気の渦を作り出して、騒音をさら1dB減少させます。集電舟も浮き上がって架線に負担をかけないように翼断面形状になっています。
で、このパンタグラフ、マストの上昇は空気圧で行なうわけですが、実は非常時にひとつの問題が発生するらしいです。その非常時とは停電時。例えば架線に異物が付着した際は架線電流を停めて除去作業を行なうわけですが、停電時は空気圧縮機も動かないため、徐々にマストの空気が減少してパンタグラフが下がってしまう可能性があるわけです。その時に万が一架線に送電されてしまうと感電事故の可能性があるため、バネ上昇式の接地装置(EGS)を使用して、万が一のアースに使うというものです。

写真ではちょっとわかりにくいですが、碍子オオイ内の手前にある、棒みたいなものがそうです。なお先行車のW1編成はさらに簡易型のシングルアームパンタグラフまで搭載していたようですが、後に撤去されたそうです。
ちなみに翼形パンタグラフはメンテンナンスに手間がかかり、寿命も通常のパンタグラフの半分の60万kmだったことから、こだま用V編成ではシングルアームパンタグラフに交換されてしまいました。また車体断面形状の問題でパンタグラフ防音壁をつけられなかったため、最高速度は285km/hにダウンしています。

V編成は2~9の8編成が出揃いましたが、先行車のW1編成は改造対象外となりました。しかもW1編成はATCのアップデートをされていないので現在は本線を走ることはできません。でもJR西日本はW1編成を試作部品のテストを行なう試験車として活用するようで、日中は博多総合車両所の構内を行ったり来たりしているようです。
一世を風靡した500系ですが、今後もがんばって欲しいものです。