日々の脳トレにもなっている『絵しりとり』の備忘録として、

この場を使わせていただこうと始めたブログですが、

 

…そう、備忘録。

 

では、きっと何年後かにまた読み返すだろう自分に宛てて、

今『ベルサイユのばら』を読んで感じたことを記しておいてしまおうと考えました。

 

ちょっと唐突な思いつきで、自分でも笑ってしまうような感覚も持ちながら…

書いちゃおう!

 

 

 

 

フェルゼンの妹ソフィアとの偶然の再会。
社交的で会話上手な彼女の何気ない言葉に、オスカルは心を乱されます。

「恋をなさったことがおありですの?」
「あなたの様な方のハートを射止めるのはどんな男性?」

諦めたつもりのフェルゼンへの想いが胸を過り、
オスカルは言葉を失ってしまいました。

 

 



そこへ現れたフェルゼン。
再会を喜んでいるフェルゼンの笑顔に反して、オスカルは作り笑いさえできません。
ソフィアの言葉で、やはり気持ちに整理がついていないことを再認識したばかり…
その場を繕おうともできないような力無い表情です。

そして不意に、

「あの時の貴婦人はやはりお前だったのか…!」

あの貴婦人がオスカルだったというだけでは、フェルゼンとの決別に直結はしなかったのでしょうが、
この時、あの舞踏会の夜と同じ儚い表情を隠せないオスカルと対面したことで、
フェルゼンには解ってしまいました。

フェルゼン…それを確かめて一体なにになると思っていたの?

本来はもっと、人を思いやることの出来る繊細な心を持った男性だったんじゃない?
苦しい恋があなたから、他人に対する配慮や想像力を奪ってしまった?
ワタシは怒りとも悔しさとも何とも言えない気持ちでいっぱいになりました。

長い間オスカルの想いに気付かず、
これまでどれほど彼女に甘え、苦しめて来てしまったか…

自分の迂闊さを後悔したフェルゼンは、
許しを請い涙ながらに、オスカルに永久の別れを告げます。

ここ大事なところです。
フェルゼンから、オスカルに別れを告げたんです。

「君に会えたことを幸福に思っている」

「いつか来るはずのこの日だった」

言いながら、涙が溢れて止まらず唇を噛みしめるオスカル…
本当は声をあげて泣いてしまいたいだろうのに。

ここでも、女性としての感情を持った自分を責めているようで、
その苦しみにたった一人で堪えているのかと思うと、もう…

結局は自分の主張しか語っていないフェルゼンに対してワタシ、
「フェルゼン、悪いけど1発グーでいかせてもらえませんかね…」な気分が抑えきれません。

 

 



フェルゼンへの想い
アンドレの失明の恐怖
王宮の飾り人形
フランスの未来

あのパリの夜、抱き上げたオスカルにアンドレが語りかけたように、
オスカルは今、
一人では抱えきれないほどの苦悩に押し潰されないよう、必死で堪えていました。



辛いとき、いつも静かにそこにいてくれるアンドレの存在が温かい。

「そのままにして…そばへ来てくれ」

「そばへ来てくれ」?!
ワタシ、そんな言葉を発したこともなければ、聞いたことも想像したこともありません。

オスカルがどれだけアンドレを信頼し、彼の助けを必要としているかということ…
彼の前でだけは、これほどまでにオスカルは素直でいられるのだということ…

このひと言で、改めてそれを強く感じさせられました。

幼い頃を懐かしむオスカルが一瞬声を詰まらせ、

「なぜ年月はこんなにも早く経ってしまうのだろう」
「大人になって苦しみの中に身を置くのだろう」

…アンドレは気付きます。

「フェルゼンに会ったのか」
「何かあったのか」

このタイミングでアンドレの口からフェルゼンの名前が出るなんて。

フェルゼンとの決別の辛さだけでなく、
フェルゼンへの女性としての想いをアンドレに気付かれていたことに驚き、
同時に正体のわからない後ろめたさに苛まれたのではないでしょうか…
オスカルは身体を強張らせてしまいます。



その一瞬の反応をアンドレが見逃すはずがありません。

「何かあったんだな?!」

この時「何があったんだ」とアンドレは聞かないんですよね。
苦しみの原因をオスカル自身に語らせまいとの優しさからなのか、
それとも彼女の口から聞かされるのが怖かったのか…。

いずれにしても、

アンドレの男性としての衝動と葛藤に今のオスカルは気付くことはできません。
想像さえしなかったでしょう。

そして
『信頼するアンドレ』の前だからこそ、
『支えであるアンドレ』に救いを求めるかのように、
オスカルの傷付いた心が一瞬こぼれてしまいす。

 

 

 

 



でも、目の前にいたのは、
いつもの静かに見守っていてくれるアンドレではありませんでした。

強く腕を掴まれ身動きが出来ないまま、オスカルは初めて見るアンドレに目を見張ります。

 

 

「彼にいったい何が起こっているのか」
それが解らずオスカルは怖かったと思います…決してアンドレ自身が怖かったのではなくて。

アンドレにとっては、自分に対してこんなに怯えるような視線を、
オスカルから向けられたのは初めてのことだったでしょう。

それでも、もはや決壊してしまった衝動を止めることはできず…

「殺されたってかまわない」
「お前を愛している」

力尽くで押し倒すようなかたちで、彼女にキスをします。

衝撃のシーンではありますが、ここでワタシは、

『力尽く=乱暴に』ではないということを、初めて知った気がします。

そして強く抱きしめます。

 

この時、アンドレの顔の表情は描かれていませんが、
狂おしいまでのオスカルへの愛が全身から伝わってくるようで、
この緊迫の中、ほんの少しホッとした瞬間でもありました。

 

 

 

 



しかし、オスカルの表情には驚きと戸惑いのなかに悲しさが滲んでいます。

止まらないアンドレはそのままの体勢で、ただただオスカルへの想いを語ります。



これまでの彼のオスカルへの愛を既に知っている、ワタシたち読者ならば、
共感したり応援したり、

追い詰められたアンドレの行動に嘆いたり怒りを覚えたり、
それぞれの感情でもって彼の独白を聞くことが出来たと思います。

が、いま初めてアンドレの激情に触れたオスカルに、
彼の話す言葉が、果たして届いていたのでしょうか?

…そう思うのは、オスカルは混乱で頭がガンガンいうような状態だったから。

 

 

 


「アンドレの気持ちを知って戸惑う」でもなく
「アンドレの言っていることが理解できない」でもなく、

見たことのないアンドレの姿と、その彼が言っていることを、
『理解することを脳が拒んでいる』のだとワタシには感じられたからです。

オスカルはこれ以上何も、見たくも聞きたくもない、
目の前の現実と向き合うことから逃げたかったのではないか、と。

 

その後、身体を離してアンドレと目を合わせた時に、
我を失っているアンドレと、起こってほしくない現実に対する恐怖を感じたことで、
停止していた思考が戻り、やっと抵抗できたのではないでしょうか。


オスカルが、本来の女性であることによって経験したのは苦しみばかりです。

女性としての気持ちを悟られたことでフェルゼンを失ったばかりのところ、
畳みかけるように今度は、女性であることでアンドレまで失おうとしている。

怖くて悲しくて、いつもなら真っ先に助けてくれるはずのアンドレは今はいなくて…

そんなオスカルの苦しみを考えると、

あなただけは!あなただからこそ!
そんなことをしてはいけない!
もう、やめて…

 

 

 



跪いて、縋りついて、涙を流しながら、
THE アンドレ styleでワタシがアンドレに懇願する勢いだわッ!



でもアンドレはやめてくれません、止まりません。
ベッドに押さえ付けるだなんて、その先にあるのは紛れもない暴力です。

このひとコマにワタシ、自分でも驚くほど物凄く焦りました。
ダメダメ!やめて!誰かやめさせてあげて!と、手足ジタバタ状態。

 

ただ、どうしてもアンドレを責めることは出来なくて、
感情の中心は怒りではなく「お願い」ばかりでした。
怒って嫌いになって軽蔑できたほうが、よっぽどラクなのに…苦しい。



いまオスカルは『女性としての危機』に直面しています。
だからこそ、女性として愛したフェルゼンに心の中で助けを求めたのだろう…
と、以前は思っていました。
そして、悲しいかなそれに気付いたことで、
アンドレが更に残酷な行動に出てしまったのだな、と。

 

 


 

 

 

でも、何度か読み返して今は、それだけではないような気がしています。

オスカルの女性としての感情を知って、
「これ以上お前を傷つけることはできない…」と
彼女のもとを去っていったフェルゼンと、
それを覚悟していたオスカル。

オスカルの中では『ふたりの結末』として、それが当然の形だと考えていたのだと思います。

では、アンドレとの決別については?

同じように受け入れなくてはならないのか。
自分にそれができるのか。

「永久に会うことは出来ない」と言ったフェルゼンの決断だけが正解なのか…

オスカルはフェルゼンに、その答えを求めていたのではないでしょうか。

…なんてね、深読みしすぎかしらん?
なんたって「いやああーーーッ!!」の後ですものね。



女性として嘆くとき、オスカルの心の中にはフェルゼンがいる。
それを知っているアンドレは逆上して、あの酷い行動に出てしまったのでしょう。

次のコマのオスカルの表情の横に「終わった…!」の文字が、ワタシには見えた気がしたわよーッ!


諦めとも無気力ともとれるオスカルの涙。
もう、アンドレを見ることさえできません。

「それで…どうしようというのだ…アンドレ」

ここでワタシはちょっとハッとしました。

オスカルは、絶望的な思いで言葉を絞り出したあと、
それでも、いつものように「アンドレ…」と名前を呼び掛けていたのですね。

ちょっとしたことなのですが、それが、
彼を失うかもしれないことに怯えているオスカルの、
嘆きであり、最後の祈りのようにも感じられて、

「おまえ自身の手で、わたしからアンドレを奪おうというのか…」とでも言っているかのように思えて、
急にポロポロと涙がこぼれてきてしまいました。

 

 

 

 

オスカルの絶望に触れ、アンドレは我に返り後悔に震えます。

「もう二度としないと神にかけて誓う」

 

良かった、アンドレが戻ってきた…。

そう!さっきまでのアンドレは、
彼の強い愛情とその苦しみにつけ込んだ悪いヤツ、
魔物かなんかが憑りついて彼を操っていたんだ!

なんて、オカルト好きの子供みたいな言い訳でも探さないと、
ワタシは心のザワつきを治めることが出来ませんでした。

激情と理性は表裏一体。
頭と心と身体は、必ずしも同じ方向を向いて働くものではない。

…そんなこと解っているはずなのに、
このシーンでは、何故かそれを受け入れられず、
恐怖と悲しみばかりが先走ってしまいました。

ともかく良かった。
これ以上オスカルを傷付ける前に、アンドレが戻ってきてくれた。
本当に良かった。
はぁ…ワタシったら取り乱してしまいました。

でもオスカルは取り乱してはいません。
静かにアンドレを見つめています。

「愛している」
「死んでしまいそうだよ」

そう言って涙を流すアンドレに向けられた、
この時のオスカルの眼差しが、
弱々しいだけではなく、どこか素直な温かさを含んで見えます。

自分の驚きや戸惑いよりも先に、
いま目の前のアンドレのことを思っているように見えます。

何が彼を激情に走らせたのかを…
また、アンドレの存在そのものについてを…



この事件に遭遇するまでオスカルは、アンドレを失うだなんてことは考えたこともありませんでした。

アンドレを失うとはどういうことだろう…
自分はどうなってしまうのだろう…

はじめてそれを想像し恐怖したオスカルでしたが、見出した答えはひとつ。

『アンドレとの決別などない』ということです。

傍らにアンドレがいないことこそが、
自分にとって『耐え難くあってはならないこと』

それをはっきり悟ったのではないでしょうか。



優秀な武官であり、また人を慮り救うことができる強さと優しさを持つオスカルですが、
反面、彼女は『自分の弱さを認める強さ』を持ち合わせてはいませんでした。

故に、心のどこかで自分の弱さへの赦しを欲していたはずです。

そして、
その赦しを与えてくれていたのは、いつだってアンドレだったということ、
その赦しを求める甘えを、アンドレの前でだけは許している自分に、

オスカルはこの夜に気付いたのだと思います。



直後、アンドレは右目に異常を感じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ…苦しい。

 

1年後なのか5年後なのか、10年後なのか?

読み返したワタシは、このシーンをどう感じるのかしらん?

 

 

 

じゃばい!