「でも、PS/セガサターン戦争の頃からじゃないかな、バブルが崩壊してしばらくはそのうち景気もよくなるだろうと思ってたのが、いつまで経ってもよくならず、世間一般で何かおかしいと思いだしたのは」
「いや、その頃は自分、小学生ですし、塾とゲームばっかでしたわ」
「ゆかぴょん、小学校に入る前ぐらいかと」

「で、1997年に山一・拓銀破綻でしょ」
「あー、自分、中学の時ですわ」
「ゆかぴょんは小学生だったつーに」
「でも、同級生が私立の学費払えないからって転校していったのはショックで覚えてますわ」
「まー、ボクも結婚して住宅ローン抱えてたら、他人事じゃないんだけどねww」
「そーですよね、実際今回早期退職する人の中にもそういう人は結構いるんじゃないですかね」

「リストラって用語は1992-93年頃じゃなかったかな、アメリカから入ってきた当初はリストラクチャリング、経営の再構築みたいな意味あいだったと思うんだけど」
「日本じゃクビ切りみたいな意味合いで定着してますよね」
「もう立派な和製英語みたいなもんだよねww」

「でもさ、ボクが大学入った頃はバブル崩壊後だったんだけど、まだ経営学の講座なんかじゃ日本的経営の三種の神器みたいなこと言ってたからね」
「三種の神器というと」
「終身雇用、年功賃金、企業別労働組合、みたいな」
「よく覚えてますね」
「まー、一応は講義に出てたし、社会学的なもんにも興味があったしね」
「で、実のところ、その3つって戦後の高度成長期に定着していったものにすぎないんだよね。戦前はブルーカラー、ホワイトカラーの区分けがはっきりしてたし、身分によって日給/月給/年俸のどれで貰うか分かれてたり、人材の流動性も高かったしね」
「何がいいたいかというとさ、常識は時代や階層によって違うし、伸び縮みするってこと」
「ふむふむ」

「高度成長期のいつからか…、50年代か60年代からかわかんないけど、そこからバブル崩壊後しばらく…、1990年代半ばくらいまでは『いい大学に行って、いい会社に入れば一生安泰』という常識は正しかったんだよ」
「でも、山一・拓銀破綻で大企業だって倒産するし、その後の家電・重電・鉄鋼なんかのメーカーや銀行・証券・生損保でリストラ上等で、そんな常識はンナこたーない!ってなっちゃたよね」
「ボクの就職の時は団塊世代の引退時期に差し掛かってましたから、最悪期よりはマシでしたけどね」
「日本の新卒至上主義もいかがなものかとは思うよね。その時景気がいいか悪いかの運の要素強すぎだよww」
「確かにww」

「でさ、ボクはその世間から見ればいい会社を辞めちゃうわけだけど、まあ、多分働かなくても30年ぐらいは生きていけるからいいけどさ、そうじゃない辞めたくない人が退職せざるをえない状況になるっていうのがどういう心境なのか、を考えると深淵を覗き込んだような気持ちになるわけさ」
「うーん、住宅ローンとか教育費はまったなしで、生活費どんだけかかるかなーとか、次の職場は…とかいろいろありますねえ」
「転職35歳限界説とかいうけど、年収が下がらないという条件つけたら、確かにそうだしね」
「90年代からこれまで倒産やリストラ、吸収合併で追い出されて、みたいなので失業した人、何十万人になるんでしょうね」
「延べだと百万人単位だと思うけど、そら中央線もしょっちゅう止まる時期があって当たり前だよね」

(続く)