本日、丸善で立ち読みした中に「沈みゆく大国アメリカ」という一冊が印象に残った。

2014年からアメリカでバイオブームというか、創薬メーカー中心に製薬・ヘルスケアセクターの株価が上昇していたのは知ってはいたけど、ダウ12000→18000に50%上昇したからそんなもんかなあと漠然と考えていた。

どうも2015年1月にスタートしたオバマケアにより、国民皆保険となり、保険料が安くなる……はずが、既往症のある患者の加入拒否は禁止・HIVなどの項目を保険商品に含めないと違法などとしたことから、保険料が高くなってしまったという。

そして、その高い保険に加入するか、加入しないで罰金を払うかの二択となっているという。

また、50人以上の社員を持つ企業へ、社員への医療保険提供が義務付けられたことから多くの企業は「(政府)へ罰金を払って企業保険を廃止」か「フルタイム社員をパートタイム社員へ降格」する防衛策を採ることに。

一方、医療業界も大変なことになっている。
オバマケアの加入者は大幅に増えるも、国から出るお金は低く抑えられているため、医師の66%はオバマケアのネットワークに加入していない。(=患者はオバマケアで受診できる医者を探すだけでも大変)

医師は医師で、オバマケアによって(民間の)保険会社への書類作成・提出だけでも大変に。
治療をしても保険会社から保険が下りず、患者からは責められるという板挟みに。

儲かるのは製薬・ヘルスケア企業、民間保険会社、そしてウォール街という構図。

TPPは多岐に渡る項目があるけれど、医療分野は日本の医療費だけでも年間約40兆と巨額の金が動く世界だけに、このアメリカの惨状は明日の日本の姿、となる可能性が高い。

TPPでは『日本の国民皆保険制度には手を付けない』ということにはなっているけれど、やり方はいくらでもある。

何も制度に手をつけずとも、米国の審査で顕著に効果があると認められた新薬を高値で採用させればいいのである。ギリアド社のソバルディ(C型肝炎治療薬、1錠8万円)を1日1回×3ケ月服用するとそれだけで720万円。

おお、国民皆保険で高額療養費があると税負担で取りっぱぐれがなくていいなあwwなのである。

従来の日本国内であれば、薬価交渉で価格を抑えることも可能であろうけども、アメリカの剥き出しの資本主義だと「失敗するものも含めて、開発→製品化にはお金がかかるんですよ」という論理でバカ高い薬価が罷り通ってしまう。

そして、その薬を承認しなかったり、価格交渉しようとすると……非関税障壁!得べかりし利益を払え!となるのである。

ということは、日本の医療費が膨大になって制度が崩壊するか、既に歯科治療でそうなっているように公的医療/自由診療の棲み分けとなり、自由診療の保険料をカバーする民間保険会社の医療保険に入りませんか?となるわけである。

そして、その民間保険会社の医療保険とは、日本の国内社ではなく、がん保険で外資系保険会社が圧倒的なシェアを持っているように、アメリカの保険会社しか扱えないという形で始まるのではなかろうか?

(つづく)