長野県松本市
東の山裾には玄向寺(げんこうじ)というお寺があり、
春には広い敷地のあちらこちらに彩色豊かな牡丹が咲くことから
ぼたん寺とも呼ばれています。

このぼたん寺から急な坂道を上がったところに
割烹旅館『桃山』はあります。

その名の通り、割烹料理を提供する宿泊施設で、
夕食・朝食の質が高いことでも知られていますが、

こちらの温泉は美ヶ原温泉の一画。

何より下界を俯瞰するような立地と
奥の奥まで続く緑の重なりに、
心身の垢を吸い取ってもらって

ちょっと”いい人”になって帰れそうな予感がします。

 

部屋から大浴場までは、短めの階段を降りたり上ったり、
途中に広大な庭園を望める窓もあり
足腰が達者であれば
石畳を辿って歩くその経路も小さな冒険のようでワクワクします。


泉質はおもに弱アルカリ性の単純温泉

源泉温度25℃以上で、
含有成分が各泉質の基準を満たしていない場合、単純温泉とされます。

含有成分の少ない単純温泉は
他の泉質と比べて刺激が少ない泉質です。

心理的に落ち着いた環境の中で
その気候風土も含めてゆったり過ごすことが
心理的ストレスによる種々の病態に対して改善をもたらすといわれており


単純温泉では特に
自律神経不安定症、不眠症、うつ状態の改善など
心理的症状の改善が特徴とされています。

その他、浴用の一般的適応症でもある
筋肉もしくは関節の慢性的な痛み、

またはこわばり(関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期)
運動麻痺による筋肉のこわばり
など、「こわばり」に働きかけて「ほぐす」作用があるようです。

 ※以上、『最新温泉医学(日本温泉気候物理医学会)2023』より

早々にひとっ風呂浴びてほぐれた後は、お部屋で夕食です。

今回お料理を部屋まで運んでくれたのはお2人のアルバイトの青年でしたが
旅館のトレーニングが完璧なのか、もともと親御さんの躾がいいのか、
非常に好感が持てました。

話が弾み過ぎるような慣れもなく、
かといって不愛想な感じは全く受けず、
こちらが振る話には実に真摯な態度で応えてくれて
その距離感がとても心地よく
彼らが石畳を歩いて丁寧に運んできてくれる食事を
これまでになく有難い気持ちでいただいたのでした。

箸置きもまた楽し。

 

 

温泉療養をどこで実践するか迷ったとき、

泉質にもそれぞれに特徴があって、

お悩みや目的に応じた泉質を選ぶのももちろん大切ですが、

(※病気治療中の方は温泉療法医の先生にききましょう。)

 

温泉場の気候風土であったり

お宿のスタッフさんであったり

土地の人であったり

という全部をひっくるめて

心理面に与える影響は大きいなと改めて実感しました。

松本ビューテラスからは松本平が一望できます。

 

 

ところで、
温泉以上に気持ちをほっこりさせてくれたアルバイトのお二人は、
信州大学の学生さんとのことで、
旅館だけでなく信州大学のイメージも爆上げするような学生さんでした。

地元ではない、他所の土地から勉学のために松本へ来た学生さんですから
何年かしたら羽ばたいて行ってしまうのでしょうね…
そうなったらお宿はまた信大の学生さんを一から育てるのでしょうね…
…たいへんですね…

いやしかし、信大の学生さんは、他にも人間力に優れた人がきっと多いはず。
数年前まで、実家近くのアパートに一人暮らしの学生さんがいたのですが、
通学の行き帰りに顔を合わせる母を気にかけてくれていて
卒業して松本を離れてからも
出張で来たといってわざわざ母を訪ねてくれたこともあったそうです。

若者が平気で高齢者を騙すこのご時世に
なんと心優しい青年だろうと感心したことがありました。
信州大学の学生さんは、その巣立ちまで、
長野県人みなで大切に見守りたいですね。