白玉の歯にしみとほる秋の夜の | さんぽだいすきおじさん2号のブログ

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日常の気晴らし散歩で
見つけたことや知ったことなど
書き綴っています
。。。気楽によってね!ワン!


◆與謝野 鐵幹(てっかん)
■人を戀ふる歌

妻(つま)をめとらば
才(さい)たけて
顔うるはしくなさけある
友をえらばば書をよんで
六分の俠氣四分の熱
 
くめやうま酒うたひめに
をとめの知らぬ意氣地あり
簿記の筆とるわかものに
まことのをのこ君を見る
 
わが歌ごゑのたかければ
酒にくるふと人はいへ
われに過ぎたる希望(のぞみ)をば
君ならでまた誰か知る
 
おなじ憂の世にすめば
千里(り)の空もひとつ家
おのが袂といふなかれ
やがて二人(ふたり)のなみだぞや
 
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◆與謝野晶子
■みだれ髪

人の歌(か)を
くちずさみつつ
夕よる柱
つめたき秋の雨かな
 
染めてよと
君がみもとへ
おくりやりし
扇かへらず
風秋となりぬ
 
■夏より秋へ


夕風や
すみれの海に
浮島を
つくる少女の
まろき撫肩
 
おのが身の
つながれし綱
かみそりを
もて切るごとし
初秋の風
 

わが皐月
今年児のため
縫ひおろす
白き衣の
ここちよきかな
 

わが歌は
皐月におつる
雹ならん
時をわすれて
さむき音かな
 
ひとり居に
秋風吹けば
悲しかり
濃きくれなゐの
窓掛のはし
 
夕ぐれの
砂の上をば
小走りに
秋の風行く
静心なし
 
秋くれば
手に拾ひたる
小石にも
遠きいのちの
あるここちする
 
秋の日の
うす桃いろに
かぎろへば
赤とんぼとぶ
白き蝶とぶ

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◆若山牧水
■海の声

静けさや
悲しきかぎり
思ひ倦じ
対へる山の
秋の日のいろ


秋の風木
立にすさぶ
木のなかの
家の灯かげに
わが脈はうつ


秋晴や
空にはたえず
遠白き
雲の生れて
風ある日なり
 
秋風は
木の間に流る
一しきり
桔梗色して
やがて暮るる雲
 
落日や
白く光りて
飛魚は
征天降るごとし
秋風の海
 
秋雨の
葛城越えて
白雲の
ただよふもとの
紀の国を見る
 
鉦々のなかに
たたずみ
旅びとの
われもをろがむ
秋の大寺
 
■独り歌へる
秋かぜや
碓氷のふもと
荒れ寂びし
坂本の宿の
糸繰の唄
 
■路上
秋かぜの
吹きしく山辺
夕日さし
白樺のみき
雪のごときかな
 
白玉の
歯にしみとほる
秋の夜の
酒はしづかに
飲むべかりけれ