手術は夕方。

16時前に決定しました。


病室に入って、手術着に着替えさせられ、持った来たもののチェックをして

術後に必要になるものをナースに預けます。

エコノミークラス症候群予防のきっついソックスをはかされて、点滴はじめ。

その姿は病人そのものです。

ほんの数日前、ナゴヤドームで歓声を上げていた私が病人です。

ひょっとして麻酔事故で死ぬかもしれません。

「まっいいや。森野のホームランも。昌の勝利も。ドアラのバク転も見たし」



まったく恐怖心のない私。

根性、据わってるんすかね?


私が着ている手術着は、人間ドックのときの検査着に似ていますが

前みごろと後みごろは縫い合わせておらず、マジックテープでビリビリ剥がれるタイプ。

ちょっと動くと前がはだけます。


いよいよ時間。

優しい助産師さん(最初の外来でお世話になった)に連れられ手術室に向かいます。

ここは、料理を待つ食材が運ばれる巨大厨房のような感じで。

でっかい自動ドアがいくつも並んでいます。

まずいっこめのドアを入ると

私と同じ手術着を来た人がいっぱいいます。

白内障かなんかの手術を待つっぽい爺さんとか、元気そうなオッサンとか。

私は助産師さんにメガネを預けると、不織布のシャワーキャップをかぶります。

スリッパの上からは、鑑識みたいな不織布の靴カバーも履きます。

助産師さんはさかんに「大丈夫?」と声をかけてくれますが。

私はピンボケのボケボケで何も見えず。

麻酔科の医師、さっき内診された医師が挨拶にきてくれてもさっぱりわかりません。

「かえって良かったです。何も見えなくて」


いよいよ、次の間に通される。

センターにストレッチャーっぽいの。

私はそこに寝るよう促され、横になります。

10人ぐらいいる医師たちは、何かカジュアルな会話をしています。

ホワイトボードに何か書いてあるけど、読めません。

私の名前とかでしょうか?

ここは麻酔するための部屋なのか、すでに手術室なのか不明です。

ただ、私の頭上には手術室っぽいあのライトがあります。


口の上に酸素マスクをされ、何かが出始めます。

「気分悪くないですか?」

「大丈夫です。私、都合悪くなると眠くなるんで問題ないです」

一同、談笑。

「点滴に麻酔入ってますからね」

「はい…」


知ってますか?

ウルトラマンなんかで、怪人のアジトに迷い込んだときオドロオドロシイ煙に

包まれるシーンってありますよね?

そんな感じで、わたしの周囲に煙が立ち込めた感じで息苦しくなって

私は眠りに落ちました。


「ぬくぬくさ~ん。終わりましたよ」

誰かの声で目覚めました。

目をこすろうとする私に

「だめです。軟膏塗ってますからね」と、手をどかされました。

たぶん、目にクリームを塗ってテープの目隠しをされていたんでしようね。

このあとぼんやりとした意識の中で何度か

「1、2、3」という掛声と、ベッドが変わる感覚がありました。

たぶん。手術台からストレッチャーに移動させられ

自分のペッドに戻されたのでしょう。

寝場所が決まるとすごい悪寒が襲います。

歯がガチガチ。冗談みたいな震えです。

たぶん、急激な血圧低下なんでしょうね。

電気毛布を入れてもらいました。


私が手術室に入っていた時間は約4時間だったそうです。

手術前後にいろいろな処置があって

正味3時間の手術。腹腔鏡にしてはけっこう長い手術ではないでしょうか。

後日見せられたDVDによると

ヘソ下の穴からカメラを挿入し、骨盤左右にある穴から先っぽにカニハサミのついた棒を挿入しています。

嚢腫に侵された私の左卵巣は、ダチョウの卵みたいなきれいな球体で、

その表面に傷をつけると、サラサラの豚骨スープが腹腔内に流れだします。

けっこうな量です。

残った皮のビラビラの中に大量の髪の毛です。

腹の中に髪の毛って、ありえない映像です。

この毛の入ったビラビラ皮を卵巣本体から剥離していきます。

ビデオは早回しですが、カメラを見ながらの作業です。たいへんなんでしょうね。

次に右卵巣。こちらもビュッと中にの液体を出すと、薄めた卵黄みたいなサラサラ液体が出ます。

こちらにも髪の毛です。

またまた皮の剥離作業。

ゆで卵をむくとき、薄い皮って邪魔ですよね。あんな感じ。


私は寝ていただけですが、ドクター陣は頑張ってくれました。


あと、本当に私は何の記憶もないんですが。

この手術に関して、いやな記憶は何もありません。

すべて、麻酔後のことみたいです。

手術中は、マジックテープをビラッとはがして私は素っ裸なわけですが。

手術着に着替える時、パンツだけはいていても良いといわれました。

しかし、術後の私はパンツではなくT字帯で目覚めました。

つまり誰かにパンツを脱がされた瞬間があるわけですね。

それと、おしっこの管も入ってましたから、誰かが挿入したんですね。

寝ている間にいろんなことをされた私です。


屈辱的なこともなくて。まっ良かったですよ。


さらに手術の夜編に続きます。