やっとここまで来たんだ。
8月10日
硬式テニス全日本ジュニア18歳以下男子シングルス決勝。
今、ネットを挟んだ向こうには今まで一度も勝てなかった相手がいる。
今までと唯一違うことは、そいつの表情に余裕がないこと。
Set 1-1
Game 6-5
後、1ゲーム…いや、正しくは後1ポイントか。ここまで来るのに滅茶苦茶時間がかかっちまったな。
それだけに興奮が抑まらねえや。
けど、心の中は自分でも信じられない程冷静だ。
奇跡だとも思ったが、もしかしたら、これも必然だったのかもな。
「しゃあ!!ラストー!!」
全てはこの日のために―――――――――
―――2年前、春―――
快晴の中、雀が高速で滑空している。
つい一月前に春一番が吹き、今じゃすっかり春の様相を呈している。
「春はいいな」
「新島智輝さーん、聞いてますかー?」
「あ、悪い悪い。もう一回言って?」
俺の名前は新島智輝。
この春から県立百葉高校に入学する1年生だ。
「ったく、智輝から聞いてきた癖に」
「だから悪いって。んで、百葉高校のテニス部はどうなんだっけ?」
今、俺と話してるのは、滝口龍之介。龍之介と俺は小、中ずっと同じクラスで、俺が通ってるテニスクラブも一緒の親友だ。
「百葉ねえ結構強いよ。団体では県大会ベスト8止まりなものの、個人戦では今部長をやってる高橋って人がインターハイと全日本ジュニアどっちもベスト4」
「あー雑誌でそんな感じの名前見たような気がするな」
「うん、俺もそう思って調べたんだ」
「ってか、どうやって調べたんだよ?」
「え、兄貴情報だけど」
「あ、そういえば龍之介の兄ちゃんもこの学校だったっけ?」
「そう、今年3年の副部長」
この後も他愛のない会話をしながら学校に向かっていると、自分と同じ真新しい制服を着た人がちらほらと発見することが出来るようになった。
「あそこだな」
「うん、そうっぽいね」
学校の周りにはたくさんの桜の木が立っていて、その美しい桜色を俺達に見せつけているようだった。
「よし、行くぞ」
「うん」
智輝と龍之介の高校生活が始まる
(笑)