取り出したスーツケースの一部が破損していた。

車輪の1つが根っこからバキッと気持ちいいくらい無くなっていた。


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ああ、また小パニックに陥った私であった。
とりあえず無くなった車輪を探すが、見渡す限り無い。
キョロキョロしているとさっきのネジネジ従業員が徘徊していたので慌てて話しかけた。しかもよほどテンパっていたのだろうか、私は英語で話しかけていた。
その慌てた私のちょっとした迫力にびっくりした様子のネジネジ従業員は英語で

「あそこの角をヒダリに曲がったつきあたりで聞いて下さい。」

と、きちんと対応してくれた。

それを聞くと、ちょっと安心したのか冷静になる事が出来、そこで入国審査を終えたオリビアが残念な顔をしてやってきた。

「so wetって言われたよう。」

初めての入国審査でよほど緊張したのだろうか、指紋採取の際、手が湿っていたからティッシュを渡されたらしい。
しかも使用済みのようなクシャクシャのティッシュを。
手の湿りは彼女が普段気にしている事だから、よほどショックだったろう。だけど、私はそれを聞いて笑ってしまった。

「あ、そうだ。これ見てよ、これ。」

問題を抱えていた事を一時忘れていた私は、オリビアにスーツケースを見せた。

「あ、壊れてるじゃん!!」

「そうだよ、だからどうするか聞いてみる。」

そう言って、指定された所へ向かうと、そこには陽気な黒人従業員がいた。

しかめっつらの従業員ばかり見て来たので、ここで彼の陽気さは普段なら和むのだろうが、こういう場合、逆に真面目な従業員の方がいいなと私は思った。なぜなら、私がスーツケースが壊れたと説明すると、

「君がやっちゃったのお?」

と、日本語で訳すとこんな感じだと思う。私の真剣な訴えに対し、彼はちゃめっ気満載に応えた。

「ノーノー」と、私が言うと、

「じゃあ、君かな~?」

と、陽気な従業員はオリビアを見て言った。ま、まったく話が通じない・・・。
それと、同時に私のスーツケースをひょいと拾い上げ、彼は荷物を機械に流してしまった。


「ああああああああああ!!!」


証拠の品があ!!
既にスーツケースを流してしまった機械を呆然と見ていると、後ろから何者かが話しかけて来た。
中年アジア系の従業員だった。

「どうしました?」
と、英語で彼女は私に問いかける。

「あの、スーツケースがここで受け取った時に壊れてて・・・。」
「ああ、そうですか。あなた、乗り継ぎ便は利用されますか?」
「あ、はい。」
「それでしたらここで手続きをしていたら次の便に間に合わないので、向こうの空港で手続きしてもらって・・・。」

この英会話の途中で気付いたらアジア系従業員は日本語を話していた。
なぜ日本語に変わって行ったのか、私の英語の発音のせいだろうか、後ろでオリビアがヤジっていたからだろうか。日本語をしゃべれるなら安心じゃないかと話を続けているとどこか遠くから声が聞こえて来た。

「私、英語話せますから私が聞きますー!!」

声の方へ振り向くと、1人のアジア人が搭乗客とを仕切るパーティーションの向こうで手を振っていた。

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