桂歌丸独演会 関内ホール




桂翔丸「牛ほめ」 

桂歌丸「質屋庫」 

三遊亭遊雀「堪忍袋」 

桂歌丸「鰍沢」 


この日の朝、横浜は集中豪雨で短時間にひどい雨。

 昼からは晴れたけど、こんどは風が強い。


「関内ホールが吹き飛んでしまうんじゃないかと思うほどの、 

こんなとんでもないお天気の日に足をお運びいただいてありがとうございます」 


 …ということを、もっときれいな日本語で言ってらした。 メモしてくればよかった。 

歌丸師匠の言葉遣いって、べらんめぇ調の江戸ことばではなくて、 

昔ながらの美しい日本語でおだやかで、 

かつ歯切れがよいのです。 

古女房の婆さんの仕草にも色気があって、とても粋なんですねぇ。 


『質屋庫(しちやぐら)』

ある大きな質屋の3番蔵に化け物が出るという噂が立ち、 旦那が番頭さんを呼んで、寝ずの番をしろと言う。 

臆病な番頭さんはひとりじゃ無理だと、出入りの職人の熊五郎に一緒に付き合わせようと考える。小僧が突然呼びにきたので驚いた熊五郎、旦那に聞かれもしないのに、酒樽やタクワンをくすねた事を白状してしまう。 

いよいよ丑三つ時、番頭さんと熊五郎とで、蔵の中で震えていると… 


登場人物が次々となんと4名!見ごたえありましたね~! 


以前志の輔師匠が、「落語で何役もやっていて混乱がないのは、日本語の一人称、二人称表現がいろいろあるからなんですな。


私、俺、あたし、オイラ、あっし、あなた、お前さん、アンタ、…。 

英語だと「I」と「you」で終わりですからね」 と話していらした。


なるほどですけど、それだけじゃない。 

表情や話しぶり、目線や声色でコロコロと登場人物が変わっていく様は、まさに話芸です! 


『鰍沢』

かつてあこがれた花魁に再会して、舞い上がる旅人。 

やさしくもてなす顔の裏で、毒を仕込む女。 


とてもドラマチックで、終盤の展開の速いこと! 

目の前に広がる雪の岩淵、銃を持つ女が追ってくる恐ろしさ…! 


『鰍沢』は、三遊亭圓朝師匠が、「卵酒・鉄砲・毒消しの護符」の3つのお題でこしらえた「三題噺」と伝えられているそうです。 

舞台劇を見ているような迫力でした。 


歌丸師匠の話の中の一節に、

「法華経の日蓮は母親が日輪を呑みこむ夢を見て懐妊したそうな。 

隣のカカァは七輪を呑みこむ夢を見て、翌日火事になっちまった」 

 

…って場内爆笑だったんだけど、 

私の隣の中学生くらいの子供に、横で母親が「ニチリン」と「シチリン」をごそごそ解説してました。 


そうだよね、若い人に伝わらない言葉が増えてきた。 

昭和は遠くなりにけり、です。