やばっ…数学の教科書…忘れた…
「あの…ギョンス君…ごめんね、また教科書忘れちゃって…」
ガタンっガガガっ…
わたしの言葉の意味を汲み取ると、慣れたように無言で机を隣にくっつけて、教科書を真ん中に置いたド・ギョンス君。
これで3回目。
さすがに、呆れてるみたい。
席替えで隣になってから、3ヶ月。
私たちの会話は、ほぼない。
「おはよう」って挨拶しても、無言でコクンと頷くだけ。
男子だけでいるときは、あんなに楽しそうなのになぁ…。
わたしのこと、嫌いなのかな。
・
・
タナカ先生、宿題出し過ぎだし…。
二次関数…マジわかんないし…
出たっ…不等式の証明…
うおーーー!!!(´༎ຶོρ༎ຶོ`)誰か教えて〜〜〜(涙)
♪ティロロン…ティロロンティロロン
080××××0112
ディスプレイに表示された知らない番号。
「もしもし…?」
「…教科書…」
「…はい?」
「教科書…返して」
……?
ハッ!!!ヤバっ!
これ、ギョンス君の教科書じゃん!
持って帰って来ちゃった!!!
「ごめん!すぐ返すね!どこに持ってけばいい?」
「…ペン山公園」
「ペンギン山公園ね!わかった、今からすぐ行くね!」
ペダルを思い切り踏み込み、猛スピードで向かう。
はぁ…はぁ…はぁ……
ギョンス君…どこだろ…あ、いたいた!
「…クククッ…」
…?
「ふははは!!!(笑)」
「…なに?」
「ちょんまげ(笑)」
わたしの頭を指差して爆笑してる。
…あっ、、、これ!?
前髪が邪魔で、勉強の時は結んだままで、家を飛び出して来ちゃった…
「…恥ずかしい」
ボソッと独り言のように呟いて自転車で去って行った。
…。
今…可愛いって…言った?
わたしの…聞き間違い…かな…
…ドキドキ
ドキドキドキドキ
ドキドキドキドキドキドキ
あれ…心臓が…おかしい。
・
・
「おはよう」
わっ…今日は挨拶してくれるんだ…
…ドキドキ
…ドキドキドキドキ
昨日のペンギン山公園から、わたしの心臓がおかしいことになってる。。。
ギョンス君を見ると…突然暴れ出す…
これは…何なの…。
・
・
タナカ先生〜涙
本当に毎日宿題出し過ぎだから〜(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
♪ティロロン…ティロロンティロロン
080××××0112
うそっ…
今日もかかってきた…
教科書…自分のだよ?
「もっ…もしもし⁄(⁄ ⁄•⁄-⁄•⁄ ⁄)⁄」
…ドキドキ
「相談があるんだけど」
「…相談?」
「…ずっと…好きな子がいて…明日、放課後に告白しようと思ってて…」
…ドキン
「うん…そ…それで?」
「江里山さんに、付き添ってもらえないかなって」
付き…添い?
…ズキン
「…なんで…わたしが?」
「その人…江里山さんの…友達だから」
…うそ…
あ…もしかして…菜々緒なの…?
前から噂あったし…ギョンス君は菜々緒のことが好きだって…
そっか…確かに菜々緒は…美人だし…。
クラスの男子のアイドルだもんね…
やっぱ…ギョンス君も例外じゃなかったのか…
なんか…ショック…かも。
「うん、わかった。明日、わたしはどうすればいい?」
「うん」
・
・
次の日登校すると。
菜々緒への告白を緊張している様子だった。
わたしの心臓は、
なぜかずっとズキズキと痛んでいた。
《ギョンス君へ。なんかお腹痛くなっちゃって。今日の付き添い無理そうです。本当にごめんなさい》
帰りのHRの時に、メモを小さく畳んで。
周りの人に気付かれないように、ギョンス君の机にサッと置いた。
メモを広げて、目を落とし、えっ?と驚いてこっちを見たギョンス君に、ジェスチャーで(>人<;)ゴメンと伝えて、教室を出た。
付き添いなんて絶対に無理。
だって…悲しいんだもん…。
・
・
告白…うまく行ったかな…
ギョンス君と菜々緒…付き合うのかな…。
菜々緒…相変わらずモテモテだね…。
ぱた…ぽたた…
ノートの数式に、雫が落ちて文字が滲む。
…あれ?
わたし…なんで泣いてるんだろ???
胸が…すごく痛いや…
これは…なんなんだろ…
♪ティロロン…ティロロンティロロン
080××××0112
…うそ…
こんな時に…やめて…。
無理だから…報告なんて…聞きたくないよ…
一度、着信がやんで。
♪ティロロン…ティロロンティロロン
080××××0112
すぐに二度目が鳴った。
「ぐしゅっ…も…もしもし…」
「…風邪引いたの」
「うん…ちょっと…体調悪くて…フッ…フッ…」
「…大丈夫?」
「うん…平気。今日は…ごめんね?どうだった?」
自分から聞いちゃうなんて…
わたしのバカバカバカ!!!(涙)
「告白…出来なかった」
「え…?なんで?」
「好きな子が…帰っちゃったから」
菜々緒…帰っちゃったんだ…
「そっか…残念だったね」
「残念じゃないよ…今、その子と話してるから…」
…え?
…うそ…ホントに???
「勇気が出なくて、遠回しに誘って、ごめん。
好きです…付き合ってください」
「…ごめん…なさい」
「え…ダメ…なの」
「…直接言って欲しい…その言葉」
「いっ!今から!会える⁈ペン山…」
「ペンギン山公園だよね!」
わたしはちょんまげのまま、自転車のペダルをぐんぐん踏んだ。
このまま自転車が空へ飛んでいきそうな気持ちだった。
このドキドキは…やっぱり…。
ホントに…ギョンス君なんだ…
わたしの心臓にハートの矢になって突き刺さった。
「わたしも…ギョンス君が好き」
正面に立った瞬間に。
ポロっと自分の口から溢れ落ちた。
その言葉を聞いて。
耳を真っ赤にしたギョンス君。
「これからよろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします」
お互いにお辞儀をして、笑い合った私たち。
キュン…
どうしよう…
心臓がキュンキュンして死にそう…
あれ?
ド・ギョンス君、いきなりキャラが違う…。。。
高校二年生。
これから、二人で大人の階段上ります♡
【終】