ザバーン…
…ザザーーーン…
真夜中のプライベートビーチ。
二人で並んで座って。
波の打ち寄せる音に、ただただ耳を傾ける。
松明の火で、隣に座っているギョンスの横顔が微かに見える。
ギョンスはわたしをここに連れてきて。
ずっと…わたしの手を握ったまま離さない。
海に視線を向けたまま、ギョンスが聞く。
「…うん」
返事をしても。
よかった、と言うわけでもなく。
わたしに優しく微笑んでくれるわけでもなく。
ただ無言でこうして隣にいてくれるギョンスと。
絶え間なく打ち寄せる波の音が。
今は不思議と…心地好い。
ザザン…
ザザーーン…
…ザザーーッ
「星…綺麗だね」
満天の星空を見上げて。
「もう少しで手が届きそう…」
散りばめられた星たちを掴む真似をしながら、ギョンスの手の中から、脱出させた手。
「なんちゃって(笑)」
気恥ずかしくて、わざと戯けてみせたら。
ギョンスが腰をあげようとしたけど。
「やだ。戻りたくない」
腕を引っ張って、立ち上がるの阻止する。
だって…ニョルに…会わす顔がないんだもん。
「…もう眠いから…戻ります」
…何よ。わたしが立ち直った瞬間に、いつもの小悪魔に戻っちゃうわけ?
つまんない。
「やだ!いいじゃん…もう少しだけ、ここにいてよ」
ギョンスの二の腕に、両手を絡みつけて、再び立ち上がろうとするのを必死で引き止める。
…そっか。
「ギョンスって…男だったんだ…」
いつも辛い時に。
ただ見守るように…こうして黙って泣かせてくれて…。
隣にいてくれるギョンスを。
いつしか心を許せる友達のように錯覚してしまった。
ずっと手を握ってくれていたギョンスが、男であることを忘れかけてた。。。
…さっきのバスルームでの出来事が、まるで遠い昔の事のように思える。
「ん〜…と。…チング?(笑)」
へへへ、とおちゃらけながら二の腕にわざと強くしがみついてみせると。
「危険人物とチングになった覚えはありません。甘えるな」
冷酷な一言を放ちながら、グン!と。意地悪くカラダを捻られて。
しがみついていたわたしをワザと払い退ける小悪魔。
そのまま立ち上がると、パパッとお尻の砂を払いながら、スタスタと歩き始める。
ふん、だ!
ギョンスなんて…知らないもん!
優しくないんだから!
ドケチ!小悪魔!ケチンボ大魔王!!!
とか。
その場で意地を張って座り続けてみたものの、
ちらっとギョンスのほうを見たら、もうかなり遠くに行っちゃって。
ま…マジでこのまま放置する気?
こんな夜中に女一人を海に置き去りにするとか…
えげつなくない⁈
ひどっ…
悔しくて。憎たらしくて。
猛ダッシュでその背中を追いかけていき
「行っちゃヤダ!!!」
わきの下から腕をまわして、ギョンスを全身の力で引き止める。
…この行為が、ギョンスに一番引かれることだってわかってる。
でも、今は…離れたくない。。。
ギョンスと二人のこの瞬間を…終わらせたくないよ。。。
ギューーーーっ…
…もう少しだけ…甘えさせてほしい…。
ギョンスの鳩尾の前で交差させた手に力を込めると。
優しくわたしの手をほどいて。
ゆっくりと、こっちへ振り返り。
次の瞬間。
後頭部をガシッと固定されて。
腰に手をまわされたかと思うと、前に引き寄せられ。
唇を強引に塞がれた。
…!!!
…なん…で…また…?
ぷにぷにで柔らかいハートの唇が。
わたしに無理矢理に吸いついたかと思うと、次には探り探りになったりして、迷ってる。。。
徐々に力が弱まるわたしの後頭部にあるギョンスの手。
唇から…ギョンスの中の葛藤が伝わってくる。
此処に来て煮え切らないなんて…
…男なんでしょ?
わたしはもう…怖いものなんてないから。
ギョンスがそんなんだったら…わたしからする。
ハートの唇から1度離れて。
…えっ
と驚くギョンスの首の後ろに手をまわし。
白眼の多いその瞳をジッと見つめる。
…ギョンスって…今までわからなかったけど。
よくよく見ると。めっちゃ可愛くて整った顔してるんだね…
もう…食べちゃいたいくらい…可愛いね…
ちゅっ…
ちゅっ…
ちゅっ…
ほっぺ。おでこ。眉毛。
…そして
ちゅっ…
綺麗に生え揃った睫毛に。
順番にキスの雨をわたしから降らせてみたら。
ギョンスにまたスイッチが入って、唇を奪われそうになったけど。
プイと顔を背けて、それをうまくかわして。
「わたしから…させて?」
とギョンスの耳元で囁いたら。
コクン…と、わたしの目を見つめたまま、1度だけ頷いた。
しばらくの間、見つめ合ってから。
ギョンスのぽってりした唇を、指でゆっくりなぞったら。
すごく美味しそうだから、ペロンと軽く舐め上げてみた。
そしたら、力が抜けたように、ぽかんと少しだけ口が開かれて。
わたしの涎でテラテラと光を放つその唇がたまらなくいやらしくて。
小悪魔のその顔があまりにそそるから。
わたしから、吸い込まれるようにその唇に吸いついて。
ギョンスを味わう。
さっき初めて知ったこの味。
これ…。
これが…たまらない…。
病みつきになる…ギョンスの熱いキスの味。
もっと…もっと欲しくなる…
魔法の味…。
ザザーッ……
ザザーーン…
お互いの服を脱がせ合って。
ギョンスのTシャツを砂の上に広げてそこに座るように促される。
冷たい砂の上。
そのままギョンスにゆっくり押し倒される。
コクン。
ゆっくりと。
ギョンスの華奢な指がわたしのカラダを這い出す。
「んあ……っ」
ギョンスの肌が。
匂いが。
指が。
唇が。
舌が。。。
触れるわたしのカラダ全ての細胞が。
歓喜の声を上げる。
好きとか…愛してるとか。
そんなこと、関係なくて。
ただ目の前にいるギョンスを。
一人の男のギョンスを。
本能で欲するわたしがいる。
きっと。ギョンスもそうなんだよね?
たまたま、わたしと一緒にいるから。
同調してるだけなんだよね?
…それでもいいの。
今は…ただ…抱かれたい。
ギョンスに…強く抱かれたい。
慰めて欲しいんだ…。
わたしのカラダの隅から隅まで、ギョンスの指が触れると。
どんどんと熱いものがこみ上げてきて…。
愛おしくてたまらなくて…。
無心にキスをねだると、ちゃんとそれに応えてくれて…。
「本当に…いいですか?」
直前まで合意の確認を怠らず。
「早くきて…」
耳元でそう囁き。
本能の赴くままに、熱いギョンスを自分の中に受け入れる。
そう…
これ…
…これが…欲しかったの。
ギョンスの動きに合わせて快感の波が次々と押し寄せる。
波の音と。
二人の息遣いだけが。。。
無人のビーチに響き渡る。
さっきまで…
部屋の中でしろよ
…とか言ってた張本人が。
こんなところで…
こんな事をしてるなんて…
ギョンスの腕の中で揺れながら、そんなことを思ったりもして。。。
わたしのすぐ頭上で、快楽と刹那に歪むギョンスのその顔を見ていたら。。。
たまらないほどの愛おしさが、カラダの奥底から強くこみ上げてきて。
そのまま一緒に天国へ連れていかれた…。
続く。