パリもめっきり寒くなり、青空の見えない季節がやってきました。
オペラ座を出ると余韻に浸っている者たちが白い息を吐きながら優雅にダンスをしています。一緒に踊らないかと声をかけられ、「喜んで。」と軽く返事をし、寒いのを忘れて交流しました。
今回はフユとの旅行の続きを書こう。
旅の最終地イタリアでキアラと会う約束をしていた。
キアラはイタリア貴族の女性で奇遇な出会いだった。お互い同じパーティーに出席して面識はなかったが、後日キアラからメールが届いた。
僕が撮っていたスナップ写真に彼女が写っていて、その写真をみてキアラが「この写真を撮った人を知りたい。」と、その会場にいたカメラマンに尋ね、何人か心あたりを探して僕にたどり着いたそうだ。
「私は初めて自分のことが魅力的だと、ニュイが撮った写真をみて思えたの。私、あんな風に可愛らしく笑えていたのね。だからどうしてもお礼が言いたくて。ありがとう。」
キアラは自分にコンプレックスがあったそうだ。僕が撮った写真に写る自分をみて初めて可愛いと思えたと喜んでいた。
幼い頃から父親に厳しく躾けられ、乗馬やフェンシングを習い、彼女いわく女の子らしいことが出来なかったという。
自分で「私筋肉質だからパンツスタイルの方が似合うの。私雑だから。」とこちらが気にならないことを言っていた。
フユのことは僕の親友だと聞いて、フユの演技を観に行ったらしい。それ以来フユに憧れて「是非2人で一緒に遊びに来て欲しい。」とミラノからSignalでメッセージが届いた。
フユに話すと彼もとても楽しみにしていた。
キアラは地中海クルーズを提案してくれた。
僕たちは豪華客船に乗船し、海の上を楽しむことにした。
スケジュールは2人にお任せしていたので知らなかったけれど、乗り込んでみたら全室スイートルームのバトラー付きだった。
「そのほうがニュイの面倒をみれるでしょ?」と笑っていた。
そんなことはない気もするけど、とりあえずありがとうと伝えた。
夜になってドレスアップしディナーに向かうと、エレガントでシックなキアラがいた。「このドレス似合うかしら?」僕たちが賛辞を贈る前に聞かれた。
「とても美しいよ。」
フユと2人で伝えた。
ミラノの男性は日常的に伝えるだろう。
キアラは「本当はあそこにいる女性らしい雰囲気を纏う私になりたかった。」そこにいた乗船客をみて言った。
「やってみたらいいんじゃないかな?」とフユが伝えた。フユは仕事上何の役でもこなす。
「今さら無理よ。私らしくないわ。魅力的にはなれない。」
俯くキアラに
「そうやって自分のチャンスを潰す必要もないじゃない。」
と僕は伝えた。
「そうかな。私もやってみてもいいのかな。でも、いまの自分も好きなのよ。」
僕たちは頷いて注いでもらったワイングラスを手に3人で乾杯する。
「新しく何かを好きになる時に、これまで好きだったものを否定しなくても良いんだよ。」
キアラに伝えると
「これまで好きだったものと正反対のものを好きになると、今までの自分を否定してしまう気持ちになるかもしれないね。」
それを聞くとフユは
「好きなものは増やせるよ。」
僕は
「魅力が増えるのは素敵だと思わない?」
と伝えた。
「どちらの自分も楽しめばいいし、
少しずつ慣れていけばいい。」
フユがフォローで
「最初は照れちゃうかも知れないけどね。」と可笑しそうに笑った。
続けて僕らは
「色んなサポートをしてくれたりアドバイスしてくれる人もいるから、それが大好きな人達から手を貸して貰うのもいいよ。」
やってみる価値はあると思う。
「そしてまたいつ休んでもいい。
リラックスして新しい世界を楽しんでみたら。」
そう僕はキアラに伝えた。
僕とフユはいつ興味を持ってもいいと思っている。
幼い頃から僕たちは憧れたものに肝試しならぬ度胸試しをしてきた。案外やってしまえばそれが本当に好きだったのかどうかも分かる。
キアラは
「勇気を持ってやってみる。似合わないって笑わないでね。」
そう肩を竦めて僕たちを見て微笑んだ。
茶化すように笑う人は自分の本心からこれが好きを持っていない人だ。マナー違反でもない限り美意識を持っている人はそれもいいねと自分がブレない。
「それじゃぁ、やってみようか。楽しむことだ。」
僕たちは食事に集中した。
それからキアラは船が停泊する寄港地でショッピングを楽しみ、成りたかった憧れの自分に向かっていった。
自分が想像している以上に自分の欠点と思えているところはチャームポイントだと気づいたようだ。




