瀬島龍三氏は『不毛地帯』の主人公、壱岐正のモデルと言われている。
様々な俳優が主人公を演じているが、最近では唐沢寿明氏が演じる
。
超簡単に瀬島氏のプロフィールを紹介する。
<瀬島龍三氏>
・明治44年、富山生まれ。
・陸軍士官学校、陸軍大学を卒業し、大本営参謀として活躍。その後、シベリアに11年間抑留される。
・帰国後、伊藤忠商事に入社し、会長まで上り詰める。
・第2次土光臨調、第1次行革審議委員などの政府から要請された仕事を行う。
自身も山崎豊子氏の原作を読み、瀬島氏に大変興味を持つ
。
当然、唐沢寿明主演のドラマも全て観る。
本やドラマではモデルとなる壱岐正がメチャクチャカッコよく描かれている
。
ただ、本物の瀬島氏は壱岐氏とは相当違う側面があるらしい
。
その論評は差し控えるが、戦前・戦中・戦後を生き抜いてきたからには人には絶対に言えないことがいくつもあることは容易に想像できる
。
さて、その瀬島氏の著書を手に取る。
瀬島龍三著『祖国再生』PHP研究所 1997年刊

当時の識者たちと対談する形式で書かれている。
今から約30年前の対談。
10年一昔と言われる時代だが、今読み返しても何ら色あせないことにビックリする
。
科学進歩の発達は目覚ましいが、政治・国際問題・教育改革は全然進んでいないんじゃないかと憤りさえ感じる
。
では、ここから読後の感想を述べていきたい。
プロローグで大変興味深いフレーズが目に入る
。
その言葉は『ピンチはチャンス』。

今年亡くなった長嶋茂雄氏が読売巨人軍の監督時代、瀬島氏にアドバイスを求めた。
7月の段階で11.5ゲーム差があり、極めて優勝は厳しい状況
。
しかし、『ピンチはチャンス』が功を奏し、奇跡の大逆転で優勝を果たす
。
いわゆる『メイクドラマ』という言葉が生まれた。
私も今年、動画制作を始めたが、第1作目のタイトルがまさに『ピンチはチャンス』だった。
何とも感慨深いものを感じる
。
そして、一番興味深かったのが、国際情勢についてサウジアラビア、タイ大使を歴任した岡崎久彦氏との対談。
今、国会で台湾有事に騒がれているが、30年前にも中国問題、台湾問題、朝鮮半島問題、極東有事についてしっかり触れている
。

瀬島氏の考えは、憲法9条は個別的自衛権はもちろんのこと、集団的自衛権もあると言う。
そして、極東有事に際して集団的自衛権の行使に関する政策を国として持つべきと主張する。
今騒がれている『存立危機事態』という名称こそ、本の中には出てこないが、全く色あせない内容に驚くばかり
。
30年間、日本の外交問題が全く機能していなかったことに本当に悲しくなる
。

全体を読み終え、故安倍晋三元総理大臣の顔が思い浮かんだ。
それは故安倍総理が行ってきたことは、瀬島氏が指摘したことを実現させたたのではないかとさえ感じる
。
理由の1つは教育改革に関すること。
瀬島氏は教育基本法の改正を強く求めていた。
特に、道徳・倫理について強調している。
故安倍氏はそれに応えるように教育基本法を改正し、道徳を正式な教科とした
。

瀬島氏については賛否分かれるところだが、1つ言えることは1歩先を読む力に長けていたといえる
。
それだけ、頭の切れる人だったのだろう
。
機会があったら、他の著書にも目を通してみたい
。