不条理


逢えない日々が続く
あなたはどうしているだろうか
カミュの「ペスト」の解説聴きながら
途中で眠ってしまった
主人公たちは妻に再開できるのか
不安な夢をみた……不条理
早く目覚めて珈琲と煙草を立て続けに
深夜のラジオで気を紛らわせてる
外出を抑えて少し酒を飲み過ぎたみたい
喘息をこじらせたらもっと妻に逢えなくなる
感染症の肺炎になったらもっと逢えなくなる
午前4時からのラジオは少し不幸な話
穏やかな語り口のラジオを聴いていたいだけ
「ペスト」の続きを聴いた
妻に逢えないことが私にとって不条理の全てだ
あなたのことを思っているだけで私は幸せ
でも妻はどうだろう
何かあったら手紙を出すんだよと
切手を貼った封筒をわたした
手紙は届いてない

2020-04-14 @yoshifumi_



贈るつもりだったチューリップも
ちゃんと育てられなかったし



面会について

新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、面会を原則お断り致します。
患者さんの安全のためにご家族、ご来院者の皆様のご理解とご協力をお願い致します。
「100分de名著『ペスト』」
NHKプラスで4月18日16:36まで視聴できます
物語(ぬりえと色鉛筆)
 

過去の記憶がなければ
今の自分が何者かわからない
けれど記憶は脆弱だったりする

あんなに耐えられそうもなかったことが
大したことじゃないように思い出される

今の自分がこれで良いと言うのは
記憶を都合よく織り交ぜているのではないか

ひとが自分を物語るとき
信じてあげなければいけない
疑いを挟むと物語が崩れ去り
そこから続きがなくなる

あなたはあなたでいいと思うなら
そのひとの記憶も
大切に扱わなければいけない

思い違いしてたと
気付いてもらうのも
危うさがある
そこから新しい気付きが
生まれるかもしれないけれど

いつのときも
私はあなたを愛していたと
あなたの記憶を塗り変えようと
私は必死だ

あなたは微笑みを返してくれる
私の知っているあなたの微笑みが
全部愛想笑いだったらどうしよう
全部愛想笑いでそれに気付いていないなら
私はしあわせでないか

でもあなたはしあわせだろうか
ふたり一緒に気持ち良くなっていたのは
私の独り善がりだったとしたらどうしよう

あなたはあたらしいぬりえの本が欲しいという
私は検索して
一緒に色鉛筆はいかがですか?と広告がでる
何色あればしあわせなのだろうか

普通の鉛筆一色でも
私はしあわせになれると信じてる
でもあなたは
何色あればしあわせだろうか

色とりどりとは何色なんだろうか
水に溶ける色鉛筆や
顔料のように
混ぜ合わせられるパステル鉛筆
虹のように六色あればいいのだろうか

白と黒
黒と赤

陽の光が当たった
落ち葉のようなベージュで
重なり合っていれば
しあわせのような気もする

あなたの物語と
私の物語の
ほとんどの部分が
重なり合っていれば良いのに

すでに重なり合おうと
私がしてきたことは
独り善がりなのだろうか

ときどき
二人の身体は
重なり合ったあと
すり抜けてしまったあと
なのではないだろうかと

ふたりに子供が居ればと
それを言うとあなたは傷付く
子供があたらしい道を歩んでゆくのを
ふたりで見送りたかった
物語があたらしく綴られるのを

あなたはどんなぬりえの本が
欲しいのだろうか?

2019-04-13土曜日朝〜 copyleft @yoshifumi_

早く目覚めてから
私はぼんやりあなたを思っていて
取り留めないことを綴って




単身用賃貸


あなたがあまり長く入院しているので
ふたりで暮らす部屋を売って
単身用賃貸で暮らしている

ポストに私とあなたの名前を並べて書いた
妻が退院したら引っ越しますと
下に小さく書いた

あなたとの思い出は
セミダブルベッドと
数えるくらいのもの以外は
仕舞ってある

眠りから覚めて私はひとり
あなたとの思い出から出て
冬の朝
熱い珈琲を飲みながらけむりをくゆらせ
机の上のあなたのポートレートを眺めている

朝陽が昇るころ
ベランダで育てている
紫のチューリップの鉢が
乾いてないかたまに水やりをする

「永遠の……」という花言葉は
あなたに告げたときの一輪だけでいいと
思っていたが

とうに忘れて仕舞ってはないかと
ふたりで思い返すために
このところは毎年育てることにしている

ミネラルウォーターの330mlペットボトルに
一輪挿しした紫のチューリップが
あなたの床頭台に飾られることを
思い浮かべながら育てている

青いキャップを外して
残った青いリングが
素っ気ない花瓶の唯一の飾り

2019-01-27 copyleft @yoshifumi_










訂正済 350ml→330ml