原発メルトダウン“菅災”海水注入を中止させていた! (夕刊フジ) | NuclearPowerPlant-Nymph

原発メルトダウン“菅災”海水注入を中止させていた! (夕刊フジ)

 原発事故の悪化は人災を超えた「菅災」だった!? 東京電力福島第1原発1号機で、3月12日に開始された海水注入は菅直人首相(64)が「激怒している」との情報を受け、55分間中断していたことが21日までに政府関係者などの話で分かった。首相は注入開始について「聞いていない」と怒り、海水によって再臨界が起こる危険性を指摘していたという。

 政府発表では3月12日午後6時、炉心冷却に向け真水に代え海水を注入するとの「首相指示」が出た。だが、政府筋によると、原子力安全委員会の班目春樹委員長が海水注入による再臨界を「あり得る」とし、いったん指示を見送った。

 ところが、東電は現場の判断で同7時4分に海水注入を始めた。これを聞いた首相が「聞いていない」と激怒したとの情報が入った。

 東電側は首相の意向を受けてから判断すべきだとして、同7時25分に海水注入を停止した。その後、海水注入でも再臨界の問題がないことが分かり、同8時20分、再臨界を防ぐホウ酸を混ぜたうえでの注水が再開されたという。

 再臨界は連続的な核分裂が再び起こる現象。再臨界が起きると燃料が水蒸気と反応して爆発、圧力容器などが壊れて大量の放射性物質が大気中に放出される危険がある。

 海水注入の中断はどのような影響を及ぼしたのか。北海道大の奈良林直教授(原子炉工学)は次のように分析する。

 「海水の注入は続けるべきだった。注入できなかった55分間は、圧力容器に対して非常に厳しい状況だっただろう。たとえ炉内の状況が分からなかったとしても、メルトダウンや圧力容器の損傷を防ぐ意味で注入を続けるべきだった。ホウ酸を加えることは間違いではないが、注入を止めてまですることではない」

 また、大阪大の住田健二名誉教授(原子力工学)も「東電が(原子炉にダメージの大きい)海水注入をためらい、官邸側が『冷やせ』と指示したのならば分かるのだが、真相はどうなのだろう」との見解だ。

 首相は震災直後、「僕は原子力にものすごく詳しい」と胸を張ったといわれる。ただ、後に有識者に向かって「臨界って何だ?」とたずねたとも。臨界の意味もよく分からず海水注入の中断させ事態の悪化を招いたなら、原発事故は「菅災」にほかならない