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東京新聞 2012年4月15日 朝刊
東京電力福島第一原発事故で周辺の山や森に降った放射性セシウムが、春の雪解け水とともに河川に流れ込み沿岸の田畑を汚染しないか心配されている。農林水産省は福島、茨城両県の計七市町村の河川の水を採取し、森林からセシウムがどう移動するのかを調べている。同省が十三日に公開した福島県広野町の調査地点を取材した。
原発から南に二十数キロメートル。阿武隈山地を源流にして街を流れ太平洋に注ぐ河川の上流域に当たる。福島での調査は一部を除いて三月から始まり、ここでは毎日二リットルの渓流水を電動ポンプでくみ上げ、一リットル容器二十四本を収めたタンクに集めて採取日が分かるようにしている。
「雪解け水は落ち葉を通って土壌中に入り、最終的に渓流に流れ込み、渓流の水量は増える。その時に、森林に降ったセシウムが渓流に入るのかどうかの調査です」
同省からの委託で雪解け水を調べている独立行政法人・森林総合研究所(茨城県つくば市)の坪山良夫・水土保全研究領域長が現地で説明した。「セシウムが実際に流れ込む場合、その量が時間とともにどう変化するかなど、森林から移動するメカニズムを分析したい」という。

渓流の水を電動ポンプにつないだチューブで吸い上げ、タンク内の容器に集める
=13日、福島県広野町で
森林内の空間放射線量は昨年十月は毎時〇・八マイクロシーベルトだったが、今は同〇・三五マイクロシーベルトに下がっているという。
昨年、福島市などの山間地の水田で収穫されたコメからは、当時の暫定規制値(一キログラム当たり五〇〇ベクレル)を超えるセシウムが出た。汚染された土が森林から出る水とともに水田に入った可能性が指摘され、雪解け水の影響も心配されている。
広野町は事故後に緊急時避難準備区域(昨年九月に解除)となり、町独自の避難指示も三月末に解除したばかり。今年のコメ作付けは自粛を決めているが、調査地点の下流で代々稲作を続けてきた農家の男性(69)は「雪解け水で川や田んぼの汚染が進まないか」と話す。
こうした不安を背景に、調査は福島県では同町のほか飯舘村、伊達、二本松、郡山、会津若松市で、茨城県では二月から城里町で行われている。同町と郡山市では年内いっぱい、それ以外は今月いっぱい取水する。
農水省によると、調査場所は、文部科学省の空間放射線量のデータを踏まえ、一定程度の積雪があって下流に農地や民家がある場所を選んだ。城里町は、原発事故前から同研究所が河川に流れ込む物質を研究していたことも理由になった。
◆ナマズとギンブナ新基準値を超える 霞ケ浦
茨城県は十四日、霞ケ浦で捕れたアメリカナマズとギンブナから国の新基準値(一キログラム当たり一〇〇ベクレル)を超える同一七五~一一二ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。県は流入河川も含め、周辺の漁協に出荷自粛を要請した。