街頭スナップ…2
このシーンは一度ブログに挙げた事がある。
雨上がり、初夏の中野駅前商店街。角の向こうからラテン系美女が歩いてくる。
私は迷わずカメラを向けた。やや遠目だがシャッターをレリーズした。脳裏にトラブルの可能性もかすめたが、撮らずに死ぬなら撮って死のう…そんな気分だった。
撮影する私を一瞥して彼女は横を通りすぎてゆく。互いにすれ違った時、通り雨の匂いと彼女の濃く甘ったるい香りが、街の空気に混じり合って流れ去る…。
このプリントを見る度に、記憶と記録が同時に時間軸に蘇る。このシーンに使ったカメラ機材など記す事は今更に冗長で陳腐ではあるが、ミノルタSRT101前期型改造機・55ミリf1.7、ともに1970年代前後に製造されたカメラとレンズだ。
街頭スナップにおいての撮影機材にデジタルカメラ、フィルムカメラの差はない。コンデジ・スマホからライカに至るまで使う本人の意識は違うだろうが、それだけの自意識幅にしかならない。
問題は町中で人を撮影するリスクであろう。特に私は必ず数枚は正面から撮るのでトラブルに巻き込まれる危険もある。
それでも撮りたいと渇望するシーンがある。これを撮れないと『お前に存在価値はない』と言われているような感覚が走る時がある。
最近、自分と写真の関係を再考察して思い当たった事がある。仕事的に撮影に臨むべきか、あるいは趣味的なのかも含めて考えてみた。
所詮、自分が撮影したい対象を追い、その写真を見せたい人に見せ、写真を持っていて欲しい人に渡したら、私の役目は終わりだ。あとはサヨウナラで良い。無責任な放言とは承知しているが、わたしには写真が趣味でも仕事でもない事に改めて気がついた。
同時に、この答えを出すには早計であることも自明なのだ。
焦る必要もないが、残された時間は少ない。
