THE END ・THE DOORS
もう一枚買った。これも180円。
たぶん、廉価版だろうね。
THE・DOORSの企画モノ…特に映画『地獄の黙示録』に『THE END』は巧み挿入されていて、あの映画を見た者に与えた音楽・映像効果は強い印象がある。
この曲を改めて聞きたくて買った。
乾いた聲と呪術的とも聞こえるジム・モリソンのボーカルと歌詞は感覚的に、単にメジャー路線を歩む『ロック音楽』とは一線を引く。
作者は、ずっと後ろ向きに歩きつつ、先鋭に時代を切り抜いた視点があって、言わば『天才とは何人にも媚を売らない』…たぶん、そんな箴言に近い。
しかし、ネットを検索すると当時の時代を重ねて、退廃的に歌詞を捉えた文章が目立つ。だが、私は退廃的な気分に依って当曲を味わうのは早計だと思う。
人間は生きているからこそ、欲望や嫉妬があり、我々男ならば好きな女がいたら犯したいくらい暗い情熱を有する。心の奥に潜めた闇ではあるが、それは大方の人間が抱えて生きている世の習いだ。
その迷動からの救済が『死』であるとすると、肉体から魂の昇華こそが救いと考えてしまうだろう。
いや…そうではない。
死は誰にも平等にある。慌てて死ぬ必要もないし、誰かを救済と称して殺す事も、また違うのだ。
ヨハネの黙示録が、破滅と混沌こそが人間の常であるとしながら、その裏側に穏やかな世界が営まれていると訴えたように、例えばダンテの『神曲』も地獄の奥に潜ったら『天』に至る道であった…その解釈に、この曲は近いと思えた。
終わりが来るのは、魂が平等の証明なのだ。その日まで、穏やかに静かに争わず生きて行けないのだろうか。
もう一つ、巧みに効果的なのが、この曲の終章段に導くまでの構成だ。教会の天井に描かれた壮大で潔いフレスコ画を眺めるような美しさがある。
この歌詞を表面だけで、つまらぬ訳で解釈するのは間違いのもとだ。
やはり『天才は何人にも媚びない』…そこに尽きる。
