猫の通う道
深夜、『老後破産』という特集番組を見ていた。
様々に思うところはあるが、苦楽はあっても人生に学ぶ方が楽しい…と私は思う。
別に特別な事ではない。家事であったり、庭の手入れなど日常の作業も含めてだ。そこに仕事が組み合わされば、少しは充実したものと言えるのか。
『大人になったら何になろう。』私の人生テーゼに近い言葉だが、あるいは、『明日は、一日の自分を違う演出で過ごしてみよう』なども良い考えに思えてきた。
話は変わる。
今日は夕食の準備で散歩を兼ねて買い出し。その帰路、日暮れ近い農道を歩いていた。
ふと…猫の気配を感じる。以前、暗闇に支配された田舎道を歩きながら『こんな闇夜、どこかで猫が見ているんだろうな…』と思った瞬間、『ニャア…』と猫に呼び掛けられた事があった。『人間にしては良い勘をしているぢゃないか…』
私は『やはり猫がいたか…』と脳裏で呟くと、再び『ニャア…』と返事をした。
その時と同じ気配を身に感じながら、私は先を急いでいた。周囲一帯に猫の気配がする。
なにげに向けた視線の先、暮れかかる畑の中に白い猫が私を凝視していた。夕飯の支度をせねばならず、急ぐ私を猫が見送るように座っている。
猫の視線を背中に受けつつ、路地を曲がる。そこにも別な猫がいた。先程の猫と同じポーズで私を見ている。
『我々の気配を察するとは、なかなかの勘だが所詮は人間の浅知恵よの…』
ふと、猫が私に知らせたい事があるのだろうか…などと空想してみる。
