浮遊
実家に戻り、田舎暮らしである。介護をしながら、たまに能楽の事を思い出す。
もはや、以前のように舞台撮影は不可能であり、また気持ちも諸事事情から稽古への熱意も果たしようがない。
心身ともに能から離れてしまったように思う。その意味では精神的には『痩男』である。
それも人生の区切りではある。いつかは人は去って行く。私から去る場合もある。
執心がないと言えば嘘だが、生きようとすれば執心を捨てるのが一番だろう。
舞えと言われたら舞ってしまうだろうし、謡えと言われたら素直に謡ってしまうだろう。
撮影をすれば舞台を追うだろうが、今は生きる上で執着に他ならず辛いのだ。
生きて行くという選択を取るならば仕方がない。
しかし、生きて行くのが面倒な私に執着を捨てられるのか。
