記憶…急/a day in the life
ある日を境にして街に流れる音楽が一色に染まった時期があった。
朝、学校へ続く通学路。途中のガソリンスタンドから聞こえる。下校する時、信号待ちのライトバン運転席ラジオから流れていた曲。
とりわけ、特に私の脳裏に強烈に印象を残した曲があった。
まだ英語を理解しない子供の耳にボーカルの言葉の響きが深く刻まれた。
学校嫌い、勉強嫌いの私に『良いじゃないか、そういう時期が人生には必要だよ…』と慰めてくれているように思った。
疲れて鞄を引きずるように帰る私が、その曲を聞いた時だけ少し体が軽くなったように感じた。
ずっと後になって、街に流れていた音楽がthe Beatlesの作品楽曲群と知った。時代は彼らの解散騒動に沸いた1970年代だった。
Let it be/ Lucy in the sky with Diamonds/a day in the life …
特に…a day in the Life は、どうしようもなく学校生活が不向きで苦痛だった私に、何か違う生き方があるんじゃないか…と諦めを示唆する曲であったように思えた。打楽器のように演奏されるピアノが、古典音楽しか知らなかった耳に新鮮であったし、英語なんて今でも苦手だが、それでも言葉と音楽の響きは私に『何か』を伝えてくれた。
今まで、中年を過ぎても『大人になったら何になろうかな…?』そう思い続けて、ずっと変わらぬまま、時間に穴が空いたように大人になったけど、まだ私は『大人になっていない』…何かになれていない。
そうだな。生まれ変わったら『まずは大人に生まれるよ』
でも、来世なんかないだろう。
『じゃあ、大人になって、何かになれないじゃないか』
そうだ。ただ、さようなら、それだけだ。
