記憶…破
郷愁は、両親の実家があった東北地方に強い。だが、先の震災と原発事故で失われた文化や村落を見る度に痛みを覚える。のどかな風景は元には戻らない。
単線の鉄路は時に信号待ちで予定を大幅に越えて停車する。
周囲は田畑しか見えず、田植えを終えた水田に初夏の日差しが映る。動かぬ列車、蒸気機関車のコンプレッサー音がコツンコツンと響く。
進まぬ列車に退屈な私。気だるい車内は大人も子供同じ空気に支配される。
車窓の外には広がる水田風景。どこから現れたのか、畦道に子供達が遊んでいるのが見えた。バットマンの面を被り、首に風呂敷を巻いて走り回る。次第に車内の大人達の注目が、鬼ごっこをして遊ぶ子供に集まり始め、のんびりした笑いが起きた。
ボッ、
汽笛がなった。鈍い振動と衝撃が響き、微速で列車は動き出した。退屈だった車内に再び目的地に向かう旅の空気が甦る。
畦道で鬼ごっこをしていた子供の体が、たちまち遠く点になってゆく。
水田に汽車のシルエットが映る。
ポー、ポポッ、軽快に汽笛が鳴った。
あぁ、もうすぐトンネルだ。

