夜行列車…3 | HOODのブログ

夜行列車…3


その昔。夜汽車の車窓。大きな踏切には踏切警手がいた。踏切小屋があって、列車が近づくとハンドルを回して引き上げてあった踏切綱を降し、踏切を閉鎖。白旗を振って列車を向かい入れる。踏切横には彼らのために小さな羽目板作りの小屋が建てられて、中にはストーブが備え付けられていたりした。屋根にはコンクリート製の瓦が葺いてある小屋もあった。幹線ならば深夜でも貨物列車の通過があるから、踏切番は交代制であったようだ。

夜半、車窓から踏切小屋を見ると裸電球が灯されていて、中に中年を過ぎた職員が一人見える。

最小の労働力と精神性、勤勉な奉仕精神があれば勤まるように思えた。立てば半畳の職場である。一人黙々と列車を待つ。

あるいは入れ換え作業で、機関車がせわしく往復をする。その間は踏切は閉鎖されたまま、車や通行人は待たされる。

『開かずの踏切』だが、踏切番だけが機関車に白旗を振り続けている。入れ換え作業が終わると軽く
汽笛を鳴らした機関車が遠ざかり、踏切綱が上に上がる。

待ちかねた我々が行き過ぎるシーンを眺めながら、踏切番は小屋に腰を下ろし、彼は一服をする。

何よりも小屋の佇まいが良い。風雪の強い日、扉を閉めて列車を待つ様子など絵的な風情さえあった。